図4から分かるが、A点のコネクタのハンダ面のパターンが剥離し、浮いている。どうやらパターンの実装設計に無理があるようだ。ハンダ面のコネクタのランドの面積が小さいため、この中継コネクタを強く押し込むとパターンに掛かる力でランドがはがれてしまう。
恐らく製造者はこれを知っていて、中継コネクタの嵌合(かんごう)を甘くしてパターンに掛かる力を軽くしたと思われる。逆にこの嵌合が甘いコネクタが接触不良を引き起こしトライアックのゲートに十分な電圧が掛からずトライアックはオフしたままになったと推定される。
コネクタの圧着を強化し、パターンがはげないようにハンダ面のランドを補強した。その結果AC100Vを通電すると正常に2次側の電圧が出力されてファンも回り始めた。各電圧を測定したが、DC5V電圧が少し高めだったので、電源基板のボリウムで調整した。その他の電源電圧は正常な値だった。ケースに組み込んで1台目の電源の修理は完了した。
AC200Vでの動作は客先で確認してもらったが「OK」の返答だった。ただしファンから異音が出るとのことで、客先にファンの交換を行ってもらった。ファンから異音が出るということは長い期間この電源は使用されたことでコネクタの接触不良が生じて出力電圧が出なくなったと推定される。
次は2台目のATX電源である。これは基板上の部品が焼損しており非常に難解な修理だった。焼損部の写真を図5に示す。
本来は図5の中央に茶色のプラスティックフィルムコンデンサがあるが、完全に焼損していた。これを見て愕然(がくぜん)とし、“この電源は修理して大丈夫だろうか?”と少し気後れした。しかし、焼損の原因を見つけることは非常に重要なことである思い気を取り直した。
とはいっても正規な図面はなく、ネットで見つけた類似の回路図で修理せざるを得ない。この修理にはかなり悩み、苦しみ、何回かギブアップしかかった。これを修理完了することで焼損原因も分かる可能性が高いと気力を振り絞りって、修理の費用は度外視し、時間をかけて修理を継続した。その結果、修理完了だけでなく基板の焼損原因もほぼ特定できた。この続きは次回に詳細に説明する。
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