今回はシリアルタイマーを紹介しよう。シリアルタイマーは2端子の回路で負荷と直列(シリアル)に接続して負荷を一定時間動作させるタイマーだ。名前はもちろん仮称だが、非常に便利な回路だ。
今回はシリアルタイマーを紹介しよう。シリアルタイマーは2端子の回路で負荷と直列(シリアル)に接続して負荷を一定時間動作させるタイマーだ。名前はもちろん仮称だが、非常に便利な回路だ。
シリアルタイマーの目的は簡単な接続で信号の時間を伸ばすことにある。例えば数秒しか出力しないセンサーのオン信号に接続すると、数十秒の長い時間のオン出力に変えることができる。シリアルタイマーの最適な用途はセンサーライトだ。人感センサーが作動した時にセンサーのオン出力は1秒程度であるがシリアルタイマーを付加するとこれを数十秒オンさせることができる。またシリアルタイマーの出力は駆動能力が大きいので、LEDライトなどの重い負荷も直接駆動することができる。
まずはシリアルタイマーの回路の基本から説明しよう。
一般的に発振回路(無安定回路)の回路を一部変更することで、タイマー(単安定回路)に変えることができる。昔、マルチバイブレータを学んだ方であればお分かりいただけるだろう。
これは便利! 2端子の発振回路「シリアルオシレータ」で紹介したシリアルオシレータも同じで、簡単にタイマーに変えることができた。シリアルタイマーの回路図を図1に示す。
図1の右側の破線で囲んだ部分がシリアルタイマーで、2端子回路であることが分かる。図1の左側は電源、負荷とセンサーの接点がつないである。この回路はシリアルオシレータの回路を2カ所変更している。1つ目は抵抗R1をダイオードD1へ変更している。2つ目はR3を削除している。なお、オン時間を長くするためコンデンサC1を大きな容量にした。回路を比較するため、シリアルオシレータの回路図を図2に示す。
図1の動作を簡単に説明しよう。ダイオードD1は電源投入時にコンデンサC1を急速充電させ、タイマーの電源を確保する。コンデンサC1は短時間で充電されるのでC1の充電電圧が安定し、タイマーの精度を確保できる。次に抵抗のR3がないので、トランジスタQ1のベース電圧は電源電圧の同じ電位であり、通常はベース電流が流れない。このため電源投入時はQ1、Q2ともオフとなっている。タイマーの時間はC1の放電時間で決まるので、C1を大きくすればタイマーの時間を長くできる。
シリアルタイマーは、入出力ライン(+)とGND(−)間にトリガ入力としてセンサー信号を接続する。センサー接点が短時間オンすると、タイマー出力のトランジスタQ2が長時間オンし、タイマーが動作する。
具体的な回路の動きを詳細に説明する。センサーが作動してシリアルタイマーの入出力端子(+)の電位が約0.5V以上下がると、コンデンサC1からQ1のベースに電流が流れQ1がオンする。Q1がオンするとQ2のゲートに電圧が印加されQ2もオンし、タイマー出力がオンになる。この後はセンサーがオフしてもQ1、Q2はオン状態を維持し、LEDは点灯する。
センサー単体は小さい駆動能力でかつ、Q1を動作させる短い時間の動作で十分である。タイマーがスタートするとコンデンサC1はR2,R4の抵抗を通して放電する。コンデンサC1が放電し、その電圧がFET Q2のゲートしきい電圧まで下がるとFET Q2がオフし、タイマー出力がオフになってLEDが消灯する。FET Q2がオフするとトランジスタQ1のベース電圧が上がり、Q1も急激にオフする。その後コンデンサC1はダイオードD1を通して急速充電されて初期状態へ戻る。
シリアルタイマーの時間を確認してみた。電源電圧が12VでFETのゲートしきい値電圧が2Vのものを使用したら、図1の回路構成でLEDは約9秒間点灯した。コンデンサC1を33uF程度にすると、約30秒のタイマーになった。
タイマーの時間はコンデンサC1の放電時間で計算できる。12VからFETがオフするしきい値電圧までの放電時間を求める。タイマーの計算式はT=C×R×LN(Vcc/Vgs)である。C=10uF R=0.5MΩ(=R2//R4)Vcc=12V VG=2Vとするとタイマー値は約9秒になる。電源電圧を高くしFETのゲートしきい電圧が低いものを使えば、タイマーの時間をかなり長くすることもできる。
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