今回は、不具合原因が予想外のところに潜んでいた修理の事例を紹介する。修理したのは、1985年製のボードチェッカー。意外な不具合原因とともに、30年以上、現役を続けるチェッカーの長寿命設計にも驚いた。
修理の仕事の1番の面白みは、いろいろな未知の機器に巡り合えることだ。今回はベア基板の導通を確認するチェッカーの修理について報告する。このチェッカーはなんと1985年製だった。30年近くも現役で動作しており、かなりの長寿命に感銘すら覚えた。
修理を依頼されたチェッカーの不具合内容は『マザーボードにテスト基板を16枚実装できるが、12枚目から16枚目の5枚のテスト基板が動作しない』ということだった。チェッカーの動作は下位のテスト基板から順に選択して出力を確認し、選択したテスト基板に動作不良があればそれ以降の基板はチェックしないという動作だった。チェッカーに実装するテスト基板を入れ替えても同様な現象だったので、テスト基板の不良ではなくチェッカー本体のマザーボードに不具合があると思われた。
不具合内容から電気的な不良であればチェッカーのI/Oのアドレスから基板を選択するデコーダもしくはドライバに不良があると推測された。しかし、テスト基板の動作不良が4枚単位や8枚単位ではなく、16枚を割りきれない“5枚の基板”が動作しないということなので、少し半端な感じがした。そのため、回路の動作不良ではなく、マザーボードのコネクタの接触不良も疑われる。
まず、チェッカーに実装されたマザーボードを確認してみた。16枚のテスト基板が接続されるマザーボード基板の写真を図1に示す。
マザーボードには電源と制御ICが実装されていた他、16個のコネクタがネジ止めされる形で実装されていた。マザーボードのコネクタには、P1からP16の番号が銅箔で表示され、図1の手前のスロット番号はP9である。
CPU基板とマザーボードを接続しているフラットケーブルの断線の可能性もあり、信号の配線を確認した。フラットケーブルのコネクタの勘合が少し甘かった。またフラットケーブルはケースと触れて表面が擦れていた。ケーブル単品で導通を確認したら正常に接続されており、フラットケーブルには問題はなかった。
マザーボードではCPU基板から指定されたI/Oアドレスをデコードして、16枚のテスト基板を選択していた。マザーボードに実装されているデコードICの型名を確認したらAM25LS2539だった。筆者は40年の長い期間で回路設計や不良調査の仕事をしているがこのICには初めて巡り合った。このICの機能は2-Decoderで2回路入りだった。その他にも、懐かしいSN7406とLM324もあった。どうやら5V電源でアドレスをデコードし、12V電源でテスト基板を選択して、選択された基板の出力電圧レベルを判定するように動作していると思われた。
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