どのコネクタの位置に長いネジが使われていたのだろうか?
アルミ板のネジの加工状態を確認した。するとP12のコネクタのネジ加工が緩く、短い長さのネジではコネクタがしっかり固定できなかった。長いネジを使うとコネクタが固定できた。しかし、ネジの先端の出っ張りが大きい。テスト基板を挿入してみたらネジの先端に基板が当たり、テスト基板が少し傾いた。この結果、長いネジを使った組立ミスが基板の動作不良の原因と断定できた。また客先情報でのP12からP16のテスト基板が動作できないことにも合致した。不良が出たマザーボードとテスト基板の取り付けイメージ図を図3に示す。
不良原因が分かったので長いネジがテスト基板側に出すぎないようにネジの頭に3mm程のスペーサを入れ、高さを調整しP12のコネクタをしっかり締付けた。図4に示す。
図3に赤丸で表示したP12のコネクタの固定ねじのスペーサの高さで分かるだろう。
マザーボードをチェッカー本体に再取り付けし、16枚のテスト基板を実装して動作確認を行ったら全てのテスト基板が動作OKになった。これで、修理完了だ。
回路図なしで修理するときは現物から修理品の回路をきちんと把握し、不具合現象から不良箇所を類推するしかない。今回の修理でドキュメントと不具合現象の情報が重要であることを再認識した。また今回のように予想外のところに不具合の原因が隠れていることもあり、頭の柔軟性、“気付き”が大切だ。
修理が完了したので、あらためて、1985年に製作されたチェッカーのCPU基板を眺めてみた。図5に示す。
基板の中央部にはNEC8085ACやROM RAM IOのICが見える。周囲のICはLSシリーズのTTL(Transistor-Transistor Logic)で固められていた。30年間も現場で動いている機器はやはり、すごいと思う。
1990年以降の基板では消費電流を少なくするため、CMOS ICが多用されているが、CMOS ICではラッチアップなどが起きやすく、こんなに長寿命の動作は期待できないだろう。また、電源に使用されている電解コンデンサは1990年以降の製品は液漏れしやすく故障しやすいので、長寿命は期待できない。
修理で出会ったチェッカーは、長寿命の機器を実現できる非常に良い設計例だった。
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