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バスを5V 信号から保護する回路Design Ideas 信号源とパルス処理

電圧を自動的に検出して、3.3V対応のPCIなどのバスを5V振幅の信号から保護する回路を紹介する。保護ダイオードや終端抵抗を用いて適切な終端電圧を設定すれば、1バス・サイクル以内でバスの信号振幅をある値に設定する回路としても使える。

» 2014年10月30日 14時30分 公開
[Said Jackson(Equator Technologies),EDN Japan]

 図1の回路は電圧を自動的に検出して、3.3V対応のPCIなどのバスを5V振幅の信号から保護する回路だ。保護ダイオードや終端抵抗を用いて適切な終端電圧を設定すれば、1バス・サイクル以内でバスの信号振幅をある値に設定する回路としても使える。

 ディープ・サブミクロン・プロセス技術で製造するICは、入出力部の振幅が3.3Vに制限されることがある。このICと5Vのバスを搭載するカードなどを接続すると、ICに損傷を与えてしまう。

図1 ユーザーに過電圧を知らせる回路
過電圧を検出した場合にブザーを鳴らすとともに、システムに対して誤り検出信号を出力する。PCI_AD10を入力信号に用いた (クリックで拡大)

 図1の回路は、1バス・サイクル以内で、振幅が3.3Vより大きな信号を正確に検出する。過電圧を検知したときには、アラームとリセット信号を出力して、ユーザーとシステムの両方に知らせる。

 この回路の特徴は4つある。1つは同期して過電圧を検出できるので、信号がオーバーシュートによって電圧が高くなっても、アラームを出力しない点。2つ目はバスに対してインピーダンスが高く、容量が小さい負荷として動作する点。3つ目は過電圧を検出した場合に、システムを自動的にシャットダウンできる点。4つ目は応答時間が1バス・サイクルよりも短い点である。

 この回路は、米Equator Technologies社の動作電圧が3.3Vのプロセッサー「MAP-CA」ファミリーと組み合わせて動作を確認した。動作電圧が3.3V以下のシステムにも適用できる。イクエーター社の最新チップは、動作電圧が3.3Vであっても5V振幅の信号に耐えられる。しかし、動作電圧が1.8Vや2.5Vのこの他のチップでは保護が必要だ。

 IC3には、伝搬遅延時間(TPD)が4.5nsと短い、米Maxim Integrated Products社の比較器IC「MAX999」を用いた。PCIバス信号線のうちの1本(PCI_AD10)と、1.88Vの基準電圧を常に比較している。この基準電圧であれば、5V信号が3.3Vの保護ダイオードでクランプされたときの電圧か、通常の3.3Vの動作電圧かを判別できる。信号電圧がこの基準電圧を1バス・サイクルにわたって超えた場合に、回路はトランジスタQ1に接続したアラーム・ブザーを鳴らす。

 この回路はリセット信号をシステムへ出力できる。この信号はシステムの誤り検出信号としても使える。アラーム用レジスターIC2Bは非同期型である。このためアラームは、システムからIC2Bに供給する電力を停止するか、リセット信号を入力して解除する。

 信号のオーバーシュート現象やアンダーシュート現象で誤ってトリガーがかからないようにするため、フリップフロップを基にしたレジスターIC2Aは、バスのクロック信号の立ち上がりエッジで比較器ICの出力を取り込む。この方法を用いれば、一般的なバス・クロック信号周波数33MHz、すなわち33ns周期の中で、信号が安定化してから保護回路として動作するようになる。

 IC3の3番ピンにおける3pF〜5pFの寄生容量と、検出抵抗であるR2とR3で構成する低域通過フィルターによって、この回路で対応できる最大クロック信号周波数が決まる。従って、IC3の3番ピンとR2、R3の間の配線を短くすれば、この回路で対応できる周波数を最大40MHz〜50MHzにできる。さらにR2とR3の抵抗値を対称性を保ちながら小さくすれば、バスの動作周波数は、理論的には最大140MHz以上(周期は7ns)となる。しかしこの場合、バスの負荷電流が大きくなってしまう。

 PCIバスにこの回路を実際に適用するためには、比較器IC3の3番ピンをPCI_AD10信号と接続するとよい。PCIバスを使っている機器は、他の機器を検出するときに必ず1回はこの信号を使うからだ。他の信号を同時に観測することで同様な機能を実現できる。しかしPCI_AD10信号を監視するだけでも、BIOSがシステムをブートするときに他の機器を検出する動作を実行可能だ。このため5V対応のPCIバスを使った機器を見つけ出せる。

 5V対応のPCIバスを使った機器が接続された場合、比較器IC3の1番ピン(出力Q)は、PCIバスのクロック信号の立ち上がりエッジでIC2Aをラッチ・オンする。こうしてフリップフロップベースのレジスターIC2Bが動作するようになる。この結果、ブザーLS1が鳴ると共に、IC1のトライステート出力を通して負論理の誤り検出信号がシステムへ出力される。この誤り検出信号を用いて、自動的にシステムを正常化する機能も実現できる。

 検出抵抗R2、R3と、基準電位生成用抵抗R5、R6としては公称誤差が1%の金属被膜抵抗を用いる必要がある。R5に入力する5Vの基準電圧が、比較器ICのしきい値の精度を決定する。最近の電圧レギュレーターICは十分な電圧精度があるので、システムの5V電源を基準電圧源に使える。すなわち別に5V基準電圧を用意する必要はない。ジャンパー(保護回路動作スイッチ)JP1を解放すれば、この回路の動作を無効にできる。


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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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