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理想的なインターコネクト規格を探るオープンコンピューティング向けインターコネクト[後編](4/5 ページ)

» 2015年10月30日 13時00分 公開

RapidIO

 RapidIOはワイヤレス基地局内で広く使用されています。第4世代移動通信(4G)の基地局はRapidIOを使用しています。RapidIOは、高性能の軍事演算、産業制御、ビデオ、その他の高性能演算アプリケーションにおいて、多くの採用実績があります。RapidIOはサイズ、重量、電力制約があるシステム向けに最適化されています。NASA(アメリカ航空宇宙局)は、当然ながらサイズ、重量、電力に大きな制約がある衛星アプリケーション向けにNext Generation Space Interconnect Standard(NGSIS)としてRapidIOを選択しました。

高い相互運用性

 RapidIOは、オープンな、相互運用可能なテクノロジの多くの特性を備えています。RapidIO仕様の全バージョンは公に利用可能です。RapidIO仕様は、仕様の初期バージョンに基づき作られたデバイスが、仕様の後期バージョンに準拠できる形で、進化してきました。相互運用性は、RapidIO.orgのBus Functional Model(BFM)によってさらにサポートされます。BFMは、RapidIO仕様への順守を測定するために、全てのRapidIOデバイスとIP開発者によって使用される実用的な基準です。

 RapidIOは、Freescale、Texas Instruments、Broadcom、Intel、Caviumを含む、多くのプロセッサベンダーのデバイスに統合されます。また、Xilinx、Altera、Latticeなどの主要なFPGAベンダーにもサポートされています。その他のPCIeベースのプロセッサは、外部のPCIe to RapidIOブリッジデバイスによりサポートされています。ARM、AMD、Intelなどの主要なプロセッサベンダーは最近、RapidIO.orgに参加したため、統合されたRapidIOポートを提供するプロセッサベンダー数は将来的に拡大する可能性があります。

低遅延、高帯域幅、電力効率のよい通信のために最適化

 RapidIO.orgの開設以来、RapidIO仕様は、低遅延、高帯域幅、電力効率のよい通信のために最適化されてきました。RapidIOパケットは、リンクレベルのフロー制御とエラー復旧メカニズムを通して、発生した順に伝送されることが保証されています。このため、RapidIOテクノロジは、キャッシュコヒーレンシとリード/ライトバス拡張に適しています。RapidIO仕様は、2002年以降、キャッシュコヒーレンシとリード/ライト命令に対応してきました。RapidIO.orgタスクグループは現在、AMBA、ACEなどのARMの内部インターコネクトテクノロジに対して、キャッシュコヒーレンシプロトコルのマッピングを標準化することに取り組んでいます。RapidIOプロトコルとRapidIOデバイスは、メッセージング命令にも対応しています。RapidIOシステムは、低遅延、エネルギー効率の高いデータ転送のために、RDMAスタイルの通信を通常使用しています。

 RapidIOパケットは、RapidIO用語で「デバイスID」として知られる数に従って、ルーティングされなければなりません。パケットルーティングのレジスタプログラミングモデルは、RapidIO仕様で標準化されています。RapidIOは、どんなトポロジでもマルチキャストとブロードキャストルーティングに対応します。先ほど述べたように、これによって、RapidIOデバイスが独立したメモリマップ、簡素化されたキャッシュコヒーレンシのアドレス、リード/ライト命令に対応します。

 電気通信業界の要求が動機となって、RapidIOエコシステムは、絶え間ないバック・ツー・バックパケット転送に対応し、あらゆる種類のデータ転送向けに高いグッドプットを可能にします。多くのトップ帯域幅のオプションとダイナミックで永続的な非対称リンクサポートによって、実効帯域幅/電力/グッドプットがアプリケーション要件に細かくマッチすることができます。

 さらに、RapidIOは、フォールトトレラントなシステム設計に対応します。パケットCRCエラーなどの一時的なエラーは、標準リンクエラー復旧メカニズムによって訂正されます。リンク上でパケット転送を妨げる条件は、ナノ秒からマイクロ秒で検出され、ハードウェア隔離と通知メカニズムをトリガーします。障害診断と復旧は、標準のレジスタプログラミングインタフェースによってサポートされます。2014年11月にリリースされたRapidIO 3.1仕様は、「絶対にあってはならないはず」の平均復旧時間が要求される衛星システムにおいて、宇宙産業の障害復旧要件を満たします。オペレータにもよりますが、地上のコンテナ化された高性能演算の実装では、衛星システムと同様の平均復旧時間を実現できることに留意してください。

RapidIOの弱点

 これまで分析してきた全てのインターコネクトオプションと同様に、RapidIOには弱点があります。RapidIO開発は、基地局設計の歩調に合わせて行われてきたため、新しいデバイスの登場はおよそ5年ごとです。RapidIOは現在のところ、他のインターコネクトに比べてトップの帯域幅で劣っていますし、それ故にグッドプットの点でも劣っています。新しいRapidIOデバイスの登場の予兆として、RapidIO 3.0および3.1仕様に準拠したIPについて、IDTとMobiveilにより2014年に発表がありました。

 ソフトウェアは、RapidIOエコシステムの弱点でもあります。ほとんどのRapidIOユーザーは、ソフトウェアインフラを競争上の強みと見なしており、このため、独自の専用システム管理と高性能RDMA実装を開発してきました。Linuxカーネルには、長年、RapidIO対応が含まれてきました。しかしながら、このサポートはRapidIOシステム初期化と高レイテンシ、低パフォーマンスメッセージング対応に制限されます。RapidIO.orgソフトウェアタスクグループは、この不足を修正することに取り組んでおり、Linuxカーネルへの公的な貢献は2015年3月に開始することが予想されます。

 最後に、他のインターコネクトソリューションのように、RapidIOスイッチベンダー数は、年を追って減少しています。IDTは現在、RapidIOエコシステムの主要なスイッチベンダーです。ただし、他のインターコネクトオプションとは異なり、単独のスイッチベンダーを確立することは、RapidIOをプロプライエタリなソリューションにすることにつながりません。なぜなら、RapidIOエコシステムは、マルチプロセッサとFPGAベンダーによってサポートされ、相互運用可能なエクサスケールコンピューティングに対応するために必要な全ての施設を提供する、オープンな仕様に基づいているからです。

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