新規格採用時期に関する検討を行う上でさらに考慮したい要素として、各国の国家規格制定の時期があります。
AV、ITE機器の多くが国際市場での販売を意図していると思われますが、国家間で新規格採用状況に差があると、せっかく製造者が新規格を取り入れても、新規格に対応していない国へ輸出するために結局旧規格での認証も取らなければならないということになりかねません。
この懸念に対応するため、評価試験時に使用するテストレポートの整備も並行して実施されています。IEC 62368-1の評価を中心にした1つのテストレポートで3規格(62368-1,60065, 60950-1)への適合を表す目的で「Hybrid TRF(Test Report Form)」が作られ、IECEE注3)に登録されました。
CBスキームではIECEEに登録された所定のレポートフォームを使用して規格への適合性を示すCBTR(CBテストレポート)を作成し、CBTC(CBテストサーティフィケート:CB認証書)の技術データとして添付します。このレポートフォームをTRFといいます。現在このTRFの受け入れや活用方法についての議論がなされています。
注3)IECEE:IEC System of Conformity Assessment Schemes for Electrotechnical Equipment and Components(IEC電気機器及び部品適合性評価認証制度) 電気電子機器・部品のIEC規格を使用した国際相互認証制度であるCBスキームを管轄するIEC下の組織。[参考URL:http://www.iecee.org/]
どんな規格でもあり得ることですが、特に新規格の発行初期段階では多くの使用者が規格に精通するまでの間、多くの疑問や解釈の相違が生じることが懸念されます。
そこで、TC108ではこのような疑問などにタイムリーに対処することを目的として、各地域(北米、欧州、アジア)から選ばれたTC108の専門家で構成される「Interpretation panel」と呼ぶ小委員会をTC108内に設置し、迅速な対応を実現するための運営方法などを検討しています。
従来の規格IEC 60065/IEC 60950-1から新規格IEC 62368-1への移行について述べてきましたが、TC108では継続して新規格改良の審議を行っています。要求事項の詳細にわたる明確化や改良のみならず、新技術への対応やさらなる安全性の問題など多岐にわたる案件がTCの専門家やそれぞれの国内委員会で検討されています。
これらの審議結果は将来的に第3版で反映されたり、さらなる追加のPartとして反映されたりすることになります。現状のIEC 60950-21:Remote Power Feeding(遠隔給電)に相当する内容を給電の媒体を通信回線のみでなくUSBやEthernetなどの機器相互接続やLANなども包括してPart 3規格(IEC 62368-3)とすることが検討されています。また、IEC 60950-22:Equipment to be installed Outdoor(屋外設置機器)、ならびにIEC 60950-23:Large Data Storage Equipment(大型データストレージ機器)の内容はPart 1(IEC 62368-1)の中に反映させる方向で検討されています。
上述のように、各方面で、新規格への移行に向けてインパクトの軽減や移行の円滑化の対策等の努力がなされ、さらなる規格改良の継続審議も行われています。
音響/映像機器、情報/通信機器の設計、製造、流通に携わる皆さんが、「2019年」というマイルストーンに向けて支障なく新規格に移行されるために、TC108の施策/文書をはじめ、各認証機関などが提供するサービス(参考例)を有効にご活用いただくことを願っています。
最終的に、新規格のメリットを十分に設計に反映されて、ケガの防止、事故予防などに有効活用していただくことを通じて、新規格が目指すさらなる製品安全の発展が実現することを願い、本稿の締めくくりといたします。
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