TDKは、PFHC(高調波電流抑制・力率改善回路)とDC-DCコンバーターを1パッケージにしたAC-DCパワーモジュールの新シリーズ「PFE1000FA」を発表した。出力1000Wで、変換効率90%を実現している。
TDKは2016年2月3日、AC-DCパワーモジュール「PFEシリーズ」の新製品として、「PFE1000FA」を発表した。PFEシリーズは、AC入力電圧を昇圧するPFHC(高調波電流抑制・力率改善回路)とDC-DCコンバーターを同一のパッケージにしたもので、制御基板に実装して使用する。電源の上にヒートシンクを取り付けることでファンレスの構造になっているので、屋外や、密閉空間でも使用できる。
新しいPFE1000FAは、1008Wの定格出力電力ながら90%という高い変換効率を実現している点を、最大の特長とする。2008年に発売された前品種「PFE1000F」と同じ出力電力だが効率が4%向上している。外形寸法は100×13.4×160mmで、PFE1000Fと互換性がある。
PFE1000FAには、出力電圧/電力が異なる3種類があり、本体価格はいずれも5万円。受注は2月3日から、量産出荷は3月から順次開始する。主な用途として、工業用・商業用自動機器、計測機器、ICT機器といった産業機器を想定している。
モデル | PFE1000FA-12 | PFE1000FA-28 | PFE1000FA-48 |
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入力電圧範囲 | 85〜265VAC | ||
効率(100/200VACの平均値) | 84/86% | 86/89% | 87/90% |
出力電圧 | 12VDC | 28VDC | 48VDC |
出力電流 | 60A | 36A | 21A |
出力電力 | 720W | 1008W | 1008W |
PFE1000FAでは、主に次のような方法を用いて抵抗成分を下げ、損失を減らすことで効率の向上を図った。
まず、半導体素子としては、オン抵抗の低いFETと、順方向電圧の低いダイオードを選定した。PFE1000Fを発売した2008年に比べると半導体素子はかなり進化しているので、新しい半導体素子を用いることによる損失の低減は大きいようだ。
さらに、PFHCに使用するチョークコイルではコア材を見直し、L値が小さくなるものを選択した他、DC-DCトランスの巻き数比および巻き線構成の変更、PFHC電圧の最適化、スナバ定数の最適化などにより、損失と発熱を抑える設計を行ったという。
使い勝手を考慮してモジュールのサイズ自体は変更していないが、PFE1000FAでは、効率が向上して発熱量が減ったことで放熱性が改善されるため、放熱フィンを小さくできる。そのため、空冷で使用する場合、電源の占有面積として約40%低減できるケースもあるという。
PFEシリーズの主な用途は産業機器だが、TDKによればここ最近は、特に欧米で、これまでは想定していなかったような用途も出てきているという。例えば米国では、ショッピングモールに設置されているデジタルサイネージ、ホテルの噴水ショーのための噴水制御、ソーラーパネルの制御ボックスなどに使われている。デジタルサイネージでは、LEDバックライト向けの電源として使われているが、こうした用途では薄さが要求され、スペースにも制限があるので、PFEシリーズのようなモジュール型電源が適しているようだ。
このように用途の裾野が広がっていることもあり、PFE1000FAの売上高は、5年後に4億5000万円を目指すとしている。
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