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二分化が進むクラウドRANとモバイルエッジコンピューティング無線インフラにふさわしいアーキテクチャは?(2/4 ページ)

» 2016年03月30日 11時30分 公開

普及するクラウドRANアーキテクチャ

 クラウドRANアーキテクチャは、オペレーターがリモートラジオヘッドを配備するためのファイバー網を数多く所有している、日本などアジア太平洋地域で早くも広がりを見せています。キャリアは、仮想マシンとして市販のサーバ上でホストレイヤー1〜3の基地局のスタックと、進化したパケットコア(Evolved Packet Core:EPC)を研究しています。

 汎用コンピューティングでは、レイヤー1のベースバンド機能、パケット処理、セキュリティの実装が効率的に行えないので、スループットを高くし遅延を短くすることができません。これらの機能には、サーバで特殊なアクセラレーターカードを使用する必要があります。基地局をソフトウェアの機能セットとして実装できれば、大きなメリットがあります。キャリアは、ピーク容量の要件ごとにネットワーク設備を構築する必要がなくなります。必要に応じて基地局をクラウドに取り込むことで、望ましい有効範囲と容量を提供することが可能となります。クラウドRANでは、大部分のコンテンツを置いてあるデータセンターに基地局を併置できます。これにより高い効率性がもたらされ、コンテンツを効果的に配布することが可能となります。

クラウドRANの抱える課題

 ただし、クラウドRANにはいくつかのハードルがあるため、採用には時間がかかります。ベースバンド部とリモートラジオヘッド間を長距離接続しながらレイテンシを短くしジッタを低減することは、大きな課題です。市販のサーバでは、ベースバンド処理を効率的に実行するコンピューティングリソースが十分ではありません。仮想環境で実行されるベースバンド処理のプールをホストするためには、電話会社が使用するような、レイヤー1のベースバンド用アクセラレーターカードを搭載したサーバが必要です。

 特定の地域で後れを取っているシステムベンダーは、このようなケースが市場を変化させる要因となり市場シェアが拡大することを期待しています。そして、現在の市場参加者が市場シェアを守るためにその後を追わざるを得なくなることを期待しています。キャリアは、自社のクラウドコンピューティング資産をネットワークインフラストラクチャに調和させ、配備とメンテナンスを容易にすることを望んでいるため、このトレンドを歓迎しています。

図1:クラウドRANネットワークアーキテクチャ (クリックで拡大)

 分散基地局には、コンテンツのキャッシュではローカルユーザーの好みによってサービスの提供を改善し、レイテンシの影響を受けやすいアプリケーションではソースの近くでデータを処理できるという独自の利点があります。端末ユーザーに近いため、アクセス時のレイテンシが非常に短く、カスタマイズされたサービスを導入できる可能性があります。

MECにより新しいサービスとビジネスセグメントが登場

 モバイルエッジコンピューティング(MEC)によって、ネットワークエッジのITと通信セグメントが収束され、新しいサービスとビジネスセグメントが実現することが予想されます。MECの使用例には、位置情報サービス、モノのインターネット(IoT)、ビデオ分析、拡張現実、ローカルコンテンツの配布、データキャッシュなどがあります。MECアーキテクチャによって、マクロ基地局やスーパーマクロ基地局側に、新しいアプリケーションを可能にするローカルコンピューティングとストレージ用サーバを追加できます。新しいアプリケーションの開始や複数ビジネスでサービスの垂直統合を行うエコシステムを実現するために、アプリケーション開発スタック、ツール、フレームワークが開発されています。

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