リバーシブルなUSB Type-Cケーブル/コネクターの普及がはじまっている。そして、電源ケーブルもUSB Type-Cによる給電に移行しようとしているが、双方向での給電が可能になるなど根本的な電源供給アーキテクチャの変更が必要になる。そうした中で、登場してきたUSB Type-Cでの給電を可能にする「USB Type-C昇降圧バッテリーチャージャー」とはどのようなものか、紹介していこう。
Apple(アップル)が2015年4月10日に新しいMacBookを発表し、コンピューティング機器向けパワーマネジメント技術の新時代が幕を開けた。“新MacBook”は、データと電力の同時双方向伝送を可能にするオールインワン型USB Type-Cポートを搭載している。この技術は充電機能をUSB Type-Cポートに統合することにより、MacBookの充電ポート(MegSafe)を不要にした。
さらに、第6世代Intel Coreプロセッサのリリースにより、新世代の薄型ノートPC・Ultrabook、タブレット、外部電子機器のUSB Type-C充電への移行が始まっている。しかし、USB Type-C充電には従来のパワーデリバリーアーキテクチャからの根本的な変化が要求され、システム設計者に新たな技術的課題を提示している。
本稿では、まず従来のPCパワーアーキテクチャを検討し、次にリバーシブルなUSB Type-Cケーブル/コネクターを使用したUSB Type-Cパワーデリバリーの普及がもたらす変化を解説する。さまざまなバッテリー充電アプローチを取り上げた後、USB Type-C昇降圧充電トポロジーが、設計者の求める柔軟性、高効率、小サイズを実現することを説明する。
USB Type-A/Bポートによる電子機器の充電は、スマートフォンやタブレットなどの低消費電力アプリケーションで広く使用されている。従来のUSB Type-A/Bポートは最大2Aの出力電流で5V電源を提供する。しかし、この電力レベルは消費電力の大きな機器の充電には不十分で、通常は定格出力が数十ワットのACアダプターによる充電が行われている。
従来の代表的なコンピューティングパワーアーキテクチャを図1に示す。
図1はUltrabook用電源の例を示していて、AC電圧をDC電圧に変換するACアダプターを使用し、20V電圧を使ってメイン電子機器を充電している。Ultrabookには、1〜4セルのバッテリーで構成される各種バッテリーパックが使用される。各リチウムイオンバッテリーの放電状態から満充電状態までの動作電圧範囲は、一般的に2.5Vから4.3Vである。従って、Ultrabookのバッテリー電圧範囲は2.5〜17.2Vとなる。
20V DCアダプターを使用する場合、バッテリーチャージャーはいわゆる降圧トポロジーを使って20V DCを降圧し、バッテリーを充電する。Ultrabookの5V USB Type-A/Bポートは、スマートフォンやタブレットなどの外部USBデバイスの充電が可能である。USB Type-A/Bポート向けに5V電圧を生成するため、Ultrabookは2〜4セルの内蔵バッテリーから同様の降圧トポロジーによって5V USBパワーレールを生成するか、あるいは1セルバッテリーの場合には昇圧トポロジーを使用する。
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