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DACの精度を改善するためのトリミングR2RラダーとストリングDAC(3/3 ページ)

» 2016年11月10日 11時30分 公開
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トリミングによって精度を向上

 図8に、代表的なR2Rラダー方式の16ビットDACを示します。MSB側の数ビットはセグメント化(サーモメトリックデコーディド)されていることに注意してください。R2Rラダー方式のDACのほとんどが、この方式を採用しています。

図8:R2Rラダー方式のDACの回路

 RストリングとR2Rラダーの各アーキテクチャで精度をトリミングする場合、各抵抗の絶対値を調整します。前に述べたように、高精度を実現する上で最も大きな問題となるのはINL誤差であり、これを調整することは最も実現性の高い選択肢です。Rストリング型のDACは、非常に多くの抵抗で構成されていることから、トリミングは高価になります。R2Rラダー型では調整する抵抗の数が大幅に少ないことから、この問題が克服されます。

 R2Rラダー型DACのトリムは、トリムが必要な最初のLSBビットから始めます。

データビットS0(LSB)からS15(MSB)を持つ16ビットDACにおいて、最初にトリムされるビットがS5と仮定します。トリムルーチンは隣接するコード32と33の間のエラーをみることから始まります。理想的には隣接コード間の電圧変化は1LSBです。

トリムは双方向であると仮定します、S5のエラーを初期エラーに応じて上方向または下方向に調整します。

 S5のトリムが完了したら、S5以上の(S6, S7, ……)ビットについて、全てのメジャーキャリーエラーの差分を加えてください。MSBメジャーキャリー・ビットコードに至るまで、この手順を続けてください。もし、サーモメトリックデコーデットされたMSBがあれば、手順がわずかに変化します。その場合は、サーモニックデコーデットされたメジャーキャリーを、下位から上位の順にトリムします。トリムの終わりでDACは、16ビットモノトニシティーを示すだけでなく、1LSB以下のINLを達成します。

例として、R2Rラダー型DAC(DAC80004)のINLを図9に示します。

図9:R2Rラダー型DAC(DAC80004)のデジタル入力コードに対する直線性誤差特性

まとめ

 高精度DAC製品は、高精度シグナルチェーン内で主要な地位を占めています。高精度が必要なアプリケーションでは、必要な要件を満足する、適正なDACの選択を検討することが必要です。DAC8554をはじめとしたRストリング方式のDAC製品は、汎用アプリケーション向けに価値ある選択肢を提供しますが、1LSBのINLという高精度が必要な場合は、基準を満足しません。高精度を要求するアプリケーション向けには、それらの代わりにDAC80004をはじめとしたR2Rラダー方式のDAC製品が適しています。R2Rラダー方式は、1LSB INL未満の超高精度を実現するための実用的なトリミングの選択肢を提供できるからです。

著者紹介

Rahul Prakash(ラフール・プラカシュ)氏

Texas Instruments 高精度アナログ・データ・コンバータ・グループ プロダクト・ディファイナ
数々の先端テクノロジー専門誌にアナログ回路設計技術に関する記事を執筆および、カンファレンスにおいて講演を担当。アナログ回路設計と技術に関して3つのアメリカ特許を保有。テキサス大学ダラス校にて理学修士号取得(電気工学、マイクロ・エレクトロニクス専攻)


Kunal Gandhi(クナル・ガンディー)氏

Texas Instruments 高精度アナログ・データ・コンバータ・グループ プロダクト・マーケティング・エンジニア
7年間、ミックスド・シグナル設計エンジニアとして従事し、現職に至る。南カルフォニア大学に理学修士(電気工学)およびテキサス大学オースティン校にて経営学修士(MBA)取得


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