マイコンのフラッシュメモリにプログラムを書き込む方法は「Q&Aで学ぶマイコン講座(33)フラッシュローダーとは?」で詳しく説明したが、統合開発環境(IDE)を使う方法以外に、市販のフラッシュメモリ・プログラマを使う方法もある。
フラッシュメモリ・プログラマにはRAMが内蔵されており、そのRAMにプログラムコードを事前に書き込み、その内容を直接マイコンのフラッシュメモリに書き込む。いわゆるスタンドアローンで、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリに書き込むプログラム専用装置である。内蔵RAMへの書き込みは主にPC経由で行われる。
さまざまなメーカーからさまざまな種類が販売されているが、全てのマイコンに対応可能ではなく、各プログラマで対応するマイコンは決まっている。ちなみに、マイコンの不良解析では、統合開発環境(IDE)を使って書き込む回路とフラッシュメモリ・プログラマを使って書き込む回路のどちらもチェックしなければならなければならない。そのため、両方の方法でチェックを行う。しかし、フラッシュメモリ・プログラマで書き込む方式が、統合開発環境(IDE)を使って書き込む方式と同じではないが、部分的に共通回路を使って書き込み、読み出しを行っている場合がある。これらの場合はどれかひとつの方法で、不良箇所が判明すれば、他の方法は省略される。
フラッシュメモリ・プログラマは、主に、マイコン内蔵のフラッシュメモリモジュール内のメモリセル、電源回路(昇圧回路含む)、書き込み回路、読み出し回路、アドレスデコーダーとマイコンの端子からフラッシュメモリモジュールまでの電気回路(配線含む)を検査する。
フラッシュメモリ・モジュールとその周辺回路の電気的動作。
*2017年6月21日にフラッシュメモリ・プログラマでの動作確認に関して、一部追記を行いました(編集部)
マイコンに実際に通電し、動作させて、仕様書通りの機能的動作および電気的特性を確認する試験装置をATE(Automated Test Equipment)と呼ぶ。日本では一般的にテスターと呼ばれることが多く、本記事でもテスターと呼ぶことにする。
テスターにはアナログ特性を専門に試験するアナログテスター、フラッシュメモリなどのメモリを専門に試験するメモリテスターなどがある。論理機能を試験するテスターはロジックテスターまたはファンクションテスターと呼ばれる(ただし、呼び方は、各メーカーで異なる)。
ロジックテスターは、論理機能だけでなく、AC特性、DC特性および、アナログ特性もある程度チェックできる。そのため一般的には、マイコンではロジックテスターのみを使用、または、ロジックテスターとメモリテスターの2つのテスターを併用する。
マイコンはテストモード(注:ユーザーには開放されていない)を持っていて、外部からテスト用のパターン(テストベクタと呼ぶ場合もある)を入力し、そのパターンに対する動作結果の内部信号を出力できるようになっている。その出力された信号とあらかじめ期待していた信号が一致した場合は、正常に動作したと判断される。1ビットでも一致しない場合は、異常動作なので不良品と判断される(図4参照)。
マイコンの電気的特性全部(AC、DC、ファンクション、アナログ特性)を短時間(1秒以内〜数秒)でチェックできるので、非常に便利な装置と言える。
マイコンはテスターを使えば、全ての故障(不良)が見つかると思われがちだが、決してそうではない。テストパターンの故障検出率を100%にすることは理論的にできない(例えばフリップフロップの内部のノードの故障検出はできない)。通常、故障検出率は90〜95%程度とされ、従って5〜10%の故障は検出できないといえる。しかし、なるべく100%に近い故障検出率を達成すべく、DC特性(漏れ電流や低電力モードの電流など)を組み合わせ、各メーカーは総合的に故障検出率を上げている。
マイコンの電気的特性全般(AC、DC、ファンクション、アナログ特性)。
チェックは短時間(1秒以内〜数秒)で済む。
(第2回につづく)
日系半導体メーカーにて、25年以上にわたりマイコンの設計業務に携わる。その後、STマイクロエレクトロニクスに入社し、現在までARM Cortex-Mプロセッサを搭載したSTM32ファミリの技術サポート業務に従事。ARMマイコン以外にも精通しており、一般的な4ビットマイコンから32ビットマイコンまで幅広い知識を有する。業務の傍らマイコンに関する技術論文や記事の執筆を行っており、複雑な技術を誰にでも分かりやすい文章で解説することがモットー。
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