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不良解析レポートを理解するための基礎知識 ―― 一次物理解析&電気的特性評価マイコン講座 不良解析編(1)(2/3 ページ)

» 2017年05月25日 11時00分 公開

超音波探傷観察

 超音波探傷観察は、英語でUltrasonic Testing、Ultrasonic Inspectionと言い、UTと略されることが多い。

 検査は、超音波をマイコンに与え、音響的に不良を見つけ出す。具体的には超音波探傷器から、超音波周波数帯の電気パルスを探触子(超音波の受発信を行うセンサー)の振動子に与え、電気パルスを機械的な振動に変換して、マイコンへ印加する。そうするとその振動がマイコンの表面や内部に伝播していく。その際の音響的な信号の変化、例えば素材が異なる境界などで発生する反射信号やその強度をチェックする。そして、その振動の伝播時間の違いなどをチェックすることにより、内部の材料の損傷や異物を見つけ出し、さらにその損傷、異物の大きさ、形状を探り出すことができる(図2)。

図2:超音波探傷観察原理

超音波探傷観察でチェックする内容

主にモールド樹脂とダイの間の剥離やモールド樹脂内の異物。

電気的特性評価

 ここまではマイコンの物理的損傷をチェックする解析方法を説明してきたが、ここからは電気的特性の不良をチェックする方法を説明していく。

カーブトレーサー

 カーブトレーサーは、マイコンに限らず、ダイオード、トランジスタ、サイリスタなどの半導体素子の特性を測定するための機器だ。オシロスコープとの違いは、変化させるパラメーターが電圧であること。掃引(自動的に変化)された電圧を被測定物に印加して、その時の電流を表示する。これにより、いわゆる「V-Iカーブ」と呼ばれる半導体のダイオード(PN接合)の特性を表すカーブが得られる。一般的には、ダイオードの順方向電圧、逆方向リーク電流、逆方向ブレークダウン電圧などを測定できる。

 マイコンにカーブトレーサーを使用する場合は、端子内部直近にある保護ダイオード(図3参照)のダイオード特性を測定し、電気的な破壊の有無を調べる。マイコンの端子に静電気などの高電圧が印加されると、保護ダイオードがその電圧を電源などに逃がして端子を保護するが、限度を超えると保護ダイオード自体が壊れてしまう。さらに、その奥の論理ゲートが破壊する場合もある。このような場合、端子のダイオード特性は異常なカーブを示すので、マイコン内部で破壊が起きたことが分かるという仕組みだ。

図3:カーブトレーサ観察結果例 (クリックで拡大)

 図3にダイオードが正常な場合(a)、オープン状態に破壊している場合(b)、過大電流が流れる破壊の場合、短絡状態に破壊している場合(c)の例を挙げた。

カーブトレーサーでチェックする内容

マイコンの端子周辺および、その近辺の内部回路の電気的破壊。
 例えば、静電気放電(ESD:Electro-Static Discharge)破壊、過電圧・過電流(EOS :Electric Over Stress)破壊の発生の有無。

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