マイコンをより深く知ることを目指す新連載「マイコン講座」。今回から3回にわたって、マイコンメーカーが行っている「不良解析」を取り上げる。メーカーから送られてくる不良解析レポートの内容を理解するための、不良解析に関する基礎知識を紹介していく。
実際にマイコンを使っていく中で、誤動作したり、動作しなくなったりする場合がある。その際、読者はマイコンをメーカーへ送って解析依頼するだろう。しかし、メーカーから返ってきた不良解析レポートの内容は聞いたこともない専門用語ばかりで、何をどうやって解析して、結論はどうだったのかが良く分からない……といった経験をされているだろう。
そこで本記事では一般的にマイコンメーカーが実施しているマイコンの不良解析の内容を3回に分けて解説したい。
第1回の今回は、最初に「一次物理解析」として「外観検査」「X線観察」「超音波探傷観察」を解説する。次に「電気的特性評価」として「カーブトレーサーを使った解析」「フラッシュメモリ・プログラマでの動作確認」「ATE(テスター)による解析」を解説する。
第2回では「電気的位置特定解析」として「モールド樹脂開封後、内部観察」「OBIRCH観察」「EMMIテスト」の解析結果に基づいて行われる「レイアウト解析による位置特定」を解説するとともに、「光学顕微鏡およびSEMによる観察」「SAM」について触れる。
第3回は、「二次物理解析」として「PVCチェッカー」「断面図解析(クロスセクション)」を解説する予定だ。
外観検査は、マイコンの不良解析で最初に行われる最も簡単なチェックだ。パッケージやリードに破損、損傷がないか目視で検査する。リードの損傷で最も多く見られるのがリード曲がりだ(図1)。これは運搬時の扱いが悪い場合に多く見られる不良だ。パッケージの破損では、クラック(ひび)が入っているような最悪の不良もある。もちろんマイコンは正常に動作しない。どういう扱いを受けると、このようなクラックが入るのだろうと思うほどひどいものもある。
マイコンは、出荷時に外観チェックが行われている。昔は人が目視で行っていたが、最近では自動検査装置で外観検査を行っており、検査効率と検査精度は昔に比べてかなり高まっている。したがって、破損、損傷のほとんどは、出荷後(梱包時を含む)から、輸送を経て、ユーザーがプリント板にマイコンを実装するまでに発生すると考えられる。
外力によるマイコンの外形の物理的破壊、損傷。
X線観察とは、X線観察装置を使って、マイコン内部の物理的異常をチェックする解析工程だ。リードフレームの歪曲、ボンディングワイヤの断線/歪曲/短絡、マイコンチップ/ダイ(以下、ダイ)の破損や亀裂などを検査する。マイコンの内部に関しては、取り扱いが悪くて破損することは、ほとんどない(前述したようなパッケージにひび割れが起きているようなひどい損傷具合の場合は除く)。しかし、不良がマイコン内部に潜在していて、出荷チェックで見つけられなかったが、プリント板への実装工程で、不良が顕在化する場合がまれにある。
例えば、ボンディングワイヤが歪曲したまま完成した場合だ。完成直後は電気的に問題がないが、プリント板に実装する際の熱ストレスでパッケージにゆがみが生じ、内部のボンディングワイヤが断線または隣のワイヤと接触して、電気的特性の不良となって現れることがある。このような場合は、X線観察で不良箇所を発見できる。
マイコン内部の物理的な異常。
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