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SPICE応用設計(その5):不良率0とW.C.解析SPICEの仕組みとその活用設計(16)(1/3 ページ)

今回から2回にわたって、これまで説明してきました「モンテカルロ解析」を補完し、併用する「ワーストケース解析」について説明します。

» 2014年09月26日 12時30分 公開
[加藤博二(Sifoen),EDN Japan]

工程不良ゼロを目指して

 前回2回に分けて説明しましたモンテカルロ解析では特性バラツキの様子を予測することができましたが、一般的な工程能力指数として使われるCp=1.33を確保しても片側規格の場合で30ppm、両側規格の場合で60ppm程度の不良率になってしまいます。

 また、最近の製造工程ではISO9000の品質保証要求に従って「不具合品を排除する検査が行われていますが、検査項目や検査方法が不適切であれば検査で不具合を検出できるとは限りません*1)し、検査をすれば「検査漏れ」は必ず発生します。つまり、一度作ってしまった不具合品は必ず市場へ流出する可能性を少ないながらも秘めているわけです。

 現在の製造業においては不良発生を秘めた設計は許されるはずもなく、「最悪値はどの程度か?」は不具合品を作らない「品質管理」のための工程管理としては確認しなければならない項目の1つです。

*1)出荷時の検査で検出できない不良に関するニュースは業界を問わず日夜耳にします。

ワーストケース解析(W.C.解析)

 モンテカルロ解析ではバラツキの実力範囲は推定できても「最悪値がどのような値をとるのか?」までは判定できません。偏差の極限の組み合わせをいろいろ考えなければならないのですが、ある部品は最悪値に対して正の相関がある一方、別の部品は負の相関であったり、相関がなかったりします。

 このような場合、回路方程式を作ることができれば各因子で偏微分することで因子が出力特性に与える感度を算出することができるのですが、実用回路の数十、数百にも及ぶ偏差を持つ部品について手計算で最悪値を求めることは実際には不可能と言えます。実際問題として、ツールの自動計算機能に頼らざるを得ないのです。この自動計算機能がワーストケース解析(W.C.解析)です。

 なお、この機能は多くのSPICEに搭載されていますが、SPICE3にはこのような機能が見当たりませんので商用ツールになってからの拡張機能と思われます。

 この機能をSPICE上で実現するための手法には、

(A)上記したような部品の感度解析に基づく手法(感度解析法)と、

(B)各部品にランダムに極限の偏差を与え、最悪の組み合わせを見いだす手法(ランダム偏差法)、

の2つの手法がありますが、(A)の手法はモンテカルロ解析で設定した回路図をそのまま流用できます。

 今回は主として(A)の手法についてPSpiceを用いて説明します。

注)ワーストケース解析に用いる2つの手法の名称は正式名称が分かりませんでしたので筆者が普段用いている用語で説明します。正式名称ではないと思いますのでその点はご容赦ください。


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