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スイッチングレギュレーターで電力を安定化するにはDC-DCコンバーター活用講座(2) 電力安定化(2)(1/2 ページ)

今回は、スイッチングレギュレーターにおいて、どのように電力を安定化するかについて解説します。

» 2017年08月14日 11時00分 公開

スイッチングレギュレーター

 出力電圧を制限するために余分な電力を熱として放出するリニアレギュレーターとは対照的に、スイッチングレギュレーターは誘導性部品と容量性部品のエネルギー保存特性を利用して、エネルギーの不連続なパケットとして電力を伝送します。

 エネルギーのパケットがインダクターの磁界またはコンデンサーの電界のいずれかに保存されます。スイッチングコントローラーが、負荷が実際に必要とするエネルギーだけをパケットごとに伝送するので、このトポロジーは非常に効率的です。スイッチングレギュレーターの簡略化した構造を図1に示します。

図1:スイッチングレギュレーターのブロック図 出典:RECOM(クリックで拡大)

 制御可能な量で入力から出力へエネルギーを伝送するには、リニアレギュレーターの場合より複雑なレギュレーション手法が必要です。最も一般的な制御方式はPWM(パルス幅変調)です。

 この場合、入力から出力へ伝送されるエネルギー量は、定まった時間間隔で発生するパルスの幅を変化させて変調します。PWMのデューティ比(d)は、周期T(スイッチング周波数ƒOSCの逆数)に対するオン時間ton(ソースからエネルギーが引き出される時間)の比です。デューティ比の定義は次の通りです。

 多くのスイッチングレギュレーターでは、安定化された出力電圧はPWMのデューティサイクルに直接比例します。制御ループは「大信号」デューティサイクルを使ってパワースイッチング素子を制御します。

 対照的に、リニアレギュレーターは「小信号」サーボループを使ってパストランジスタを通る電流を制限します。PWM制御はリニア制御よりはるかに効率的です。主な損失は連続的にではなく、スイッチが状態を変える間だけに発生するからです。完全にオンまたはオフしているFETはほとんど電力を消費しません。

スイッチング周波数とインダクターの大きさ

 スイッチングレギュレーターの保存素子の大きさは、おおよそ使用するスイッチング周波数に反比例します。インダクターに保存できるエネルギーと電力は次の通りです。

 インダクターに保存される電力量は周波数に比例します。一定量の電力の保存に対して、周波数を例えば2倍にするとインダクタンスLの大きさを半分にすることができます。容量性素子に保存される電力の式は次の通りです。

 この場合も、周波数を上げることにより、電力の保存に影響することなく、コンデンサーを小さくすることができます。これらの物理的サイズの減少はメーカーと顧客の両者にとって重要です。それによってスイッチングレギュレーターに必要なパッケージが小さくなり、ボード上の占有スペースも減少するからです。

 ただし、スペースの削減は、スイッチング周波数の増加によるRFノイズ放射の増加を伴うので、EMCのトレードオフが生じ、実際的な最高スイッチング周波数を約500kHzに制限します(1MHz以上で動作可能な非常にコンパクトなデザインもありますが、これらはPCBのレイアウトとEMCのシールディングに細心の注意が必要です)。

スイッチングレギュレーターのトポロジー

 トポロジーという用語は、入力電圧源からの出力電圧または電流の伝送、制御およびレギュレーションに使うスイッチング素子とエネルギー保存素子の組み合わせの形式をのことです。スイッチングレギュレーターには多様なトポロジーがあり、2つの主なグループに分類できます。

i. 動作中に入力ソースと出力負荷が共通電流経路を共有する非絶縁型コンバーター

ii. エネルギーが相互に結合された磁気部品(トランス)を介して伝送される絶縁型コンバーター。この場合、電源と負荷の間の結合は唯一電磁気界を介して行われるので、入力と出力の間の電気的絶縁が可能

非絶縁型DC-DCコンバーター

 利用可能な多様なトポロジーからの選択は、アプリケーションの要件によって決まるコスト、性能および制御特性などを検討して行います。どのトポロジーも他のものより良いとか悪いとかいうことはありません。

 各トポロジーには長所とともに短所もあり、選択はユーザーとシステムアプリケーションのニーズによります。非絶縁型DC-DCコンバーターの場合、トランスを使わない5つの基本的トポロジーがあります。

i. 降圧コンバーター

ii. 昇圧コンバーター

iii. 昇降圧コンバーター

iv. 2段反転昇降圧(Ćukコンバーター)

v. 2段非反転昇降圧(SEPICコンバーター、ZETAコンバーター)

 以下の説明では、PWM制御回路は帰還制御回路を備えており、必要な出力電圧のための正しいデューティサイクルが選択されていると仮定します。

 また、各トポロジーの伝送特性を分かりやすく示すため、理想的スイッチ(スイッチングトランジスタまたはダイオード)、さらに理想的なコンデンサーとインダクターを仮定しますが、トポロジーについて解説する前に、スイッチングトランジスタについて簡単に触れておきます。

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