FETは一般に飽和状態で使われます。このときドレイン-ソース抵抗は最小で、スイッチ内の電力損失は最小になります。ゲート電圧VGSがしきい電圧VTHより十分高い限り、FETは負荷範囲全体にわたって飽和状態になります(図2参照)。
下の簡略化された同期式降圧コンバーター回路を見ると、2個のFET、つまりGNDへスイッチングする1個(ローサイド)およびVIN+へスイッチングする1個(ハイサイド)があることが分かります。
ローサイドFETはNチャンネルデバイスで、駆動電圧がVNS >> VTH のとき飽和し、VNS < VTHのときオフします。
ハイサイドFETがPチャンネルデバイスだと、駆動電圧がVPS << (VIN - V TH)のとき飽和し、VPS > (VIN - VTH)のときオフします。ただし、PチャンネルFETの電力損失は同等のサイズのNチャンネルFETに比べて一般に3倍あり、またより高価です。
多くの電源アプリケーションで、これは受け入れ難く、ハイサイドドライバーとしてNチャンネルFETが好まれます。ただこの場合、ハイサイドドライバーは入力電圧VINより高い出力電圧を発生できなければなりません。
Nチャンネル用ハイサイドドライバーによく使われるソリューションでは、VXに矩形(くけい)信号を使用して、ハイサイドドライバーへの電源電圧をブートストラップコンデンサーとダイオードD1を介して昇圧します。
コンデンサーCBOOTはVX = GNDのときD1を介してVIN+まで充電され、VX = VIN+のとき2 × VIN+をハイサイドドライバーコンデンサーCDRIVEに放電します。このようにして、ハイサイドドライバーには、ハイサイドN-FETのゲートを入力電圧以上に駆動することができる高電圧電源が与えられます。
この簡単なブートストラップ回路の短所は、PWMのデューティサイクルが高いと、ブートストラップコンデンサーがCDRIVEコンデンサーを充電するだけの十分な時間がなくなることです。従って、デューティサイクルが100%に近い動作は不可能です。このため、コンバーターの入力電圧と負荷範囲が制限されます。
この問題の解決策の1つは、別のチャージポンプ発振器を使って、デューティサイクルの全範囲にわたってCDRIVEをVIN+以上に充電された状態に保つことです。このようなチャージポンプ回路は通常、コントローラーまたはハイサイドドライバーICに内蔵されています(以下のチャージポンプを内蔵した「MAX1614」ハイサイドドライバーの例を参照)。
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※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
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