絶縁と長い距離にわたる高速相互接続を両立する場合、絶縁LVDS(低電圧差動信号)バッファが有効です。そこで、絶縁LVDSバッファの活用例を紹介するとともに、昨今の絶縁要件などを考察し、最新の絶縁LVDSバッファソリューション例を紹介します。
絶縁は、システムの2つの部分の間で信号と電力の伝達を行いながら、直流(DC)と不要な交流(AC)を阻止します。絶縁は、作業者や低電圧回路を高電圧から保護する他、ノイズ耐性の向上、通信サブシステム間におけるグランド電位差を処理するなどの目的で、さまざまなアプリケーションで使用されています。
CMOSあるいはTTLレベルの入出力を持ったアイソレーターは、デジタルアイソレーターと呼ばれます。デジタルアイソレーターを使用すると、アイソレーターとの通信速度が遅い場合や、配線距離が数インチに制限されている場合に、同じプリント配線板(PCB)上の2つの異なる電圧ドメイン間を絶縁できます。
長い基板配線やケーブルおよびコネクターを介した高速データ通信には、CMOS信号よりも低電圧差動信号(LVDS)の方が適しています。LVDSには、CMOSに比べて低い消費電力や電磁放射、優れた信号整合性(終端処理された伝送経路による低反射)、高いノイズ耐性といった特長があります。絶縁と長い距離にわたる高速相互接続との組み合わせが必要な場合は、絶縁LVDSバッファにより、コンパクトでコスト効率の高いソリューションを実現できます。
図1には、デュアルチャンネル絶縁LVDSバッファのブロック図の例を示しています。各チャンネルは、デジタルアイソレーター・コアによって接続されたLVDSレシーバーとLVDSドライバーで構成されています。
絶縁LVDSバッファは、2つの特定用途向け集積回路(ASIC)やFPGA間でのポイント・ツー・ポイント通信の設計に利用できます。例えば、高電圧モーター制御アプリケーションでは、ノード1を安全な低電圧またはアース基準の基板上のコントローラーとし、ノード2を高電圧にバイアスした電源基板上のコントローラーとすることができます。図2に示すように、絶縁LVDSを使用して、高電圧回路と作業者が触れる可能性のある部品の間を絶縁で保護できます。
LVDSリンクは、パルス幅変調(PWM)信号の集合を絶縁されたIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)ゲートドライバーに伝送する他、インバーターからの電圧や電流などの帰還も行います。そのため、絶縁LVDSリンクには高スループットが必要です。また、絶縁LVDSバッファが高電圧ドメインと低電圧ドメインの間にある唯一の保護バリアである場合、そのLVDSバッファには強化絶縁が必要になります。
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