疑似共振(QR)コンバーターは任意のDC-DCトポロジーで構成できますが、フライバックコンバーターを使用するのが最も一般的なので、分かりやすくするために、ここではフライバックだけを考えることとします。
主な違いは、QRコンバーターのPWMタイミングは、出力電圧だけでなく最小スイッチ電流にも依存することです。フライバックコントローラーのPWM周波数は固定されており、次のサイクルをいつ開始するかを決定しますが、QRでは自励発振器を使用します。
標準的なフライバックトポロジーと同様、QRトポロジーのPWMコントローラーは、スイッチをオンにしてトランスコアのエネルギーを保存し、次にスイッチをオフにしてそのエネルギーを2次側に伝達できるようにします。出力整流ダイオード内の電流がゼロになると、入力巻線と出力巻線両方の回路が開放状態になります。コア内の残留エネルギーはすべて1次側に戻され、これにより、1次側インダクタンスLPと集中ドレイン容量CDで決まる周波数で共振が始まります。この集中ドレイン容量は、スイッチ容量、巻線間結合容量、その他の浮遊容量の合計で構成されます。
1次側インダクタンスが500μHでCDの値が1nFの場合、共振周波数は約225kHzになります。(解放状態の)スイッチにかかる電圧は、電源電圧にこの共振発振分を加えた値になります。この電圧が最小の時にPWMサイクルをリセットする(バレースイッチング:valley switching)ことは、スイッチにかかる有効電圧が電源電圧より低くなることを意味します。さらにこれは、スイッチのターンオン電圧ストレスとターンオン電流がはるかに小さくなるということであり、これら両方の効果によって効率は大幅に改善されます。
QR動作のもう1つの利点は、バレー(谷値)検出回路の精度に応じて、PWM間隔タイミングがサイクルごとにわずかに変化することです。このタイミングジッタはEMIスペクトルを平たんにして、ピークEMIレベルを低下させます。10dBの伝導性干渉レベルの低下は、従来型のフライバック回路より容易に実現できます。一方、QR動作の欠点はPWM周波数が負荷に依存する点で、無負荷状態を扱うには周波数制限回路やバレー・ロックアウト回路が必要です。
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