今回から、DC-DCコンバーターのデータシートの読み取り方を紹介します。今回の記事では、DC-DCコンバーターのデータシート概説とDC特性の測定方法について解説します。
まともなメーカーであれば、必ず製品と一緒に技術的なデータシートを提供しています。データシートには、製品の詳細情報、最低でも基本的な動作パラメーターや全体の寸法、端子の接続が記載されます。しかし、データシートに記載された情報のみを参考にしながら、あるDC-DCコンバーターを別のDC-DCコンバーターと比較するためには、大抵の場合、単に数値を比較するだけでは意味がなく、数値の意味を正しく読みとる必要があります。
問題は、多くの仕様が相互に関係しているために、一部のパラメーターを固定する必要があるということです。つまり、周囲温度や入力電圧といった特定の数値は、対象となる性能仕様の測定中は一定に保つ必要があります。例えば、負荷レギュレーションの数値は、公称入力電圧、周囲温度25℃、規定の負荷範囲において有効という条件のもとで出されます。
しかし、パラメーターの固定についてはメーカー間で決まった基準がありません。そのため、レギュレーションを0%から100%の負荷範囲に対して定めるメーカーもあれば、10%から100%のメーカーもあり、20%から80%というメーカーもあります。ということは、10%から100%の負荷範囲に対して負荷レギュレーションが±5%のコンバーターは、20%から100%の負荷範囲に対して負荷レギュレーションが±3%のコンバーターと比べ、必ずしも劣っているとは言えないということです。
同じ様に、MIL-HDBK-217Eの基準で100万時間の信頼性のあるコンバーターの方が、MIL-HDBK-217Fの基準で「わずか」80万時間の信頼性しかないコンバーターより信頼性が高いとは言えないですし、Bellcore/Telcordiaの基準で「わずか」40万時間の信頼性しかないコンバーターより信頼性が高いとも言えないのです。
基準値がないのをいいことに、自分達の製品を他社製品よりよく見せようとする恥知らずなメーカーも存在します。よく例に挙がるのは、出力リップルノイズの仕様で、通常はmVピークトゥピーク(mVp-p)で表されます。出力リップルノイズが50mVp-pのコンバーターは100mVp-pのコンバーターより優れているでしょうか? 実はそうとは限りません。
もし、データシートの裏に小さな文字で、前者のコンバーターの測定値が、47μFの電解コンデンサーと0.1μFのMLCCを並列に出力端子間に接続して、出力をさらにフィルタリングして得られた数値ですと書かれていて、一方、後者のコンバーターの仕様は外部部品を一切使わないで得られた数値だとしたら? フィルタリング部品を追加することは、信頼性の高い、安定した測定値を得るためには必要な場合もあります。
しかし、ユーザーは、測定方法の違いが測定値に影響することを頭にいれておく必要があります。2つのコンバーターの仕様の比較は、両者を熟知して初めてできることです。多くの場合、重要な仕様の測定は、実際の、あるいは予想されるアプリケーションの動作条件を用いてユーザー自身が行う必要があります。例えば、データシートには普通、効率と動作温度のグラフは記載されていません(RECOMでは、ご希望があればそのような詳細データを提供いたします)。
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