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複数電源の立ち上がり特性を制御する回路Design Ideas パワー関連と電源(1/2 ページ)

大規模LSIチップを駆動するためには、複数の電源電圧が必要になることがある。こうした複数の電源電圧をLSIに供給する際に、それぞれの電源電圧をどのように供給し始めればよいかはLSIごとに異なっている。このため、使用するLSIに適した電源供給順序を実現する回路が不可欠である。今回は、単一の入力電圧から2系統の電圧出力を生成する電源回路を紹介する。

» 2018年09月18日 11時00分 公開

単一の入力電圧から2系統の電圧出力を生成する電源回路

 FPGAやASIC、DSPといった大規模LSIチップは現在、数多くのシステムに採用されている。通常こうしたLSIを駆動するためには、複数の電源電圧が必要になる。コア電圧と入出力(I/O)電圧の2つを必要とするLSIが多い。一般にコア電圧はI/O電圧よりも低くなる。こうした複数の電源電圧をLSIに供給する際に、それぞれの電源電圧をどのように供給し始めればよいかはLSIごとに異なっている。このため、使用するLSIに適した電源供給順序を実現する回路が不可欠である。

 図1は、単一の入力電圧から2系統の電圧出力を生成する電源回路である。回路構成に若干の変更を加えることで、2通りの電源供給開始方法に対応できる。同期整流スイッチとしてMOSFETを内蔵した降圧型DC-DCコンバーターICを2つ使用した。5Vの入力電圧から、LSIのI/O電圧に向けた3.3V出力をIC1で作り出し、コア電圧に向けた1.5V出力をIC2で生成する。

図1:複数の電源電圧を出力する回路 (クリックで拡大)
2系統の電圧出力を生成する電源回路である。回路構成に若干の変更を加えることで、電圧出力を立ち上げる方法を変更できる。

 第1の電源供給方法は、レシオメトリックに2つの出力電圧を立ち上げる方法である。ここでレシオメトリックとは、2つの電源出力が同時に立ち上がり始め、同時にそれぞれの設定出力電圧に達することを意味する。この動作を実現するためには、図1において青色で示した部品(R3)を残し、青い破線で囲んだ回路部分(R6、Q1、C11、R5)を取り除く。

 レシオメトリック動作は、2つのDC-DCコンバーターICに単一のソフトスタート用コンデンサー(C14)を共有させることで実現可能である。このように接続したコンバーターICに入力電圧を与えると、各コンバーターICの出力電圧が同時に立ち上がる。図2にレシオメトリック動作時の出力電圧測定波形を示す。IC1とIC2の出力電圧が同時に、それぞれの設定値である3.3Vと1.5Vに到達していることが分かる。

図2:レシオメトリック動作時の出力電圧波形
上側の波形がIC1の出力電圧、下側の波形がIC2の出力電圧である。2つの出力は同時に立ち上がり始め、それぞれの設定値である3.3Vと1.5Vに同時に到達している。

 ソフトスタート用コンデンサーを接続するピン(SSピン)は、2つの機能を備えている。1つは、コンバーターICを待機状態に設定したり、待機状態から起動したりする機能である。ただし図1の回路ではこの機能を利用していない。この機能を実現するためには、オープンコレクタのバイポーラトランジスタまたはオープンドレインのFETをC14とともにSSピンに接続すればよい。

 バイポーラトランジスタまたはFETがオンするとSSピンが接地電位に接続され、コンバーターICをオフ状態に保つ。バイポーラトランジスタまたはFETがオフするとSSピンは開放状態になる。するとコンバーターICは直ちに、内蔵した5μAの電流源でC14を充電し始める。C14には2つのコンバーターICから合計で10μAの電流が流れ込む。C14の充電電圧がコンバーターIC内部のしきい値電圧である1.2Vに達すると、コンバーターICが起して電圧出力を開始する。

 SSピンのもう1つの機能は、コンバーターICが起動してから電圧出力を始めるまでの時間(遅延時間)を設定することである。2つのコンバーターICを接続した場合の遅延時間はC14×(1.2V/10μA)で求められる。さらに遅延時間が経過した後、出力電圧が設定値に達するまでの時間(ソフトスタート時間)はC14の静電容量に比例して決まり、C14×(0.7V/10μA)となる。ただし実際のソフトスタート時間は、この計算値よりもいくらか短くなる。コンバーターICが動作を開始した直後は、コンバーターIC内部で設定された出力電圧の立ち上がり時間に従って動作するためだ。

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