今回は、DC-DCコンバーターの出力フィルタリングを解説します。
全てのDC-DCコンバーターには、出力リップルやノイズを発生させる要素があります。
リップルは非対称(差動)擾乱(じょうらん)であり、ノイズは対称(同相)擾乱なので、出力R/Nをフィルタリングするには、2つの異なる手法を用いる必要があります。
出力リップルを減らす最も簡単な方法は、出力間に容量を追加することです(図2)。外付けコンデンサーCEXTは、内部コンデンサーCOUTと並列です。
この方法によるmV単位の出力リップルVRIPPLE,p-pの抑制効果は、合計容量、出力電流および動作周波数に依存し、式1に従います。
この式から分かるように、リップル電圧を減らすために外付け容量を追加すると、コンバーターの性能も低下します。例えば、全波出力整流コンバーターの出力容量が22μFで、電流1A、動作周波数100kHzだとすると、外付け容量を使わない場合の出力リップルは226mVp-pです。22μFの外付けコンデンサーを追加すると、リップルは約半分の112mVp-pになります。要求される出力リップル値がその半分の56mVp-pだとすると、90μFの合計容量が必要です。言葉を変えると、68μFの外付け容量が必要です。リップルをさらに20mVp-pまで減らそうとすると、ほぼ2500μFの外付け容量が必要になります。
しかし、このように大きな出力容量はDC-DCコンバーターの起動時に問題を引き起こす恐れがあるほか、急激な出力負荷変化に対するスルーレート応答を損なったり、出力短絡状態からの回復を遅らせたりすることがあります。
出力リップルを小さくするためのより実際的な解決策は、出力にインダクターを追加して、外付けコンデンサーとともにローパスフィルターを形成することです。
出力インダクターを追加することにより、出力リップルの計算式は次のようになります。
上述の例を使用した場合、LEXTが例えば100μHだとすると、わずか645μFの出力コンデンサーCEXTで20mVp-pの出力リップル電圧を実現することができます。インダクターを使用しない場合の必要容量が2500μF以上だったことを考えると、これは大きな改善です。ただし、インダクターの定格は出力電流を許容しなければならない点に注意する必要があります。
DC-DCコンバーターの内部回路や部品の値が分からない場合の概算方法は、LCフィルターのコーナー周波数を動作周波数の10分の1に設定することです。この方法を用いると、不必要なフィルター部品によるコスト増加を招くことなく、出力リップルを効果的に減らすことができます。
カットオフ周波数fcは、干渉信号が−3dB、つまり30%減少する減衰曲線上のポイントです。LCフィルターは2次ローパスフィルターなので、この点から減衰曲線は1ディケードあたり−40dBで減少していき、カットオフ周波数の10倍以上の周波数が100分の1に抑制されます。
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