リレーなど接点を持つ機構部品の不具合は大きく分けて接触不良(表2)と復帰(開路)不良(表3)の2つのケースに分けることができますが、復帰不良は主に開路を機械的な弾性に頼っているリレーに見られる問題です。これらの対策を実施した上で、実機による寿命確認を行ってください。
主な原因 | 概要 | 対策 |
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接点材料(銀)が硫黄、塩素と反応し絶縁膜が形成される | 硫黄、塩素を含んだ雰囲気中で使用した場合に銀合金が硫化銀やハロゲン化銀(塩化銀)に変質し接触不良になる。 | ・プラシール型リレーの採用 ・耐腐食性の高い接点材料の選定。 ・接点に通電する電圧・電流を大きくする。 |
炭化物(カーボン)が接点表面に蓄積する | 接点周辺に漂う有機物、有機ガス、塵埃などが開路時に接点間に発生するアークによって炭化し炭化物が生成される。(特にDC24V以下かつ100mA以下のL負荷時) | ・接点間に消弧回路を追加する。 ・プラシール型リレーの採用 ・金張り接点などの高信頼性接点の採用 ・使用環境の温湿度の低減 |
硝酸物による接点表面の青緑色の汚染(高温、高湿環境) | 接点間に発生するアークにより、オゾンが発生し、空気中の窒素と水分とに反応して硝酸を生成し接点表面と反応する。 | |
リレー内部の空間にフラックスが侵入する | 過剰なフラックスがリレー内部へ侵入し、固化して接触不良になったり、コイル導線の塗膜を膨潤させてコイルをレアショートさせたりする。 | ・スプレーフラクサの使用 ・抗フラックス型リレーの採用 ・はんだ付け後の扱いの見直し |
シリコーン環境での使用 | 別項にて説明します。 | |
表2:接触不良の原因 |
主な原因 | 概要 | 対策 | |
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接点 | 接点の溶着 | 大電流や高頻度の連続開閉によるアーク熱で接点が溶着する。 | ・接点定格電流値の見直し ・突入電流に対応したTV規格品の導入 ・コイル駆動電圧の過剰な減定格の見直し ・瞬時電圧低下の確認、対策 ・消弧回路の導入 ・接点材料、表面処理の見直し (耐転移性Ag<AgCdO<AgInSn<AgCu) |
接点の移転 (ロッキング不良) |
DCでのL負荷投入や過大突入電流によるメイク時アークにより接点が蒸発し、−極へ付着、堆積して機械的に引っかかって離れない。(直流、数〜数十アンペアで顕著) | ||
金接点のスティッキング(接点粘着) | リードカットや超音波洗浄などの振動で接点が擦れると表面の金分子がむき出しになり粘着して離れなくなる。 | ・リードカットを廃止して切断時の衝撃を防止(メーカーフォーミング品の導入)。 ・超音波洗浄の廃止 |
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リレーコイルと電源との配線距離が長い場合 | 高圧の動力ラインなどに長く並走すると電線間の浮遊容量からリレーコイルに電圧が誘起され、復帰不良やタイミングのズレが発生する。(ACリレー) | ・リレー駆動回路の低インピーダンス化 ・引き回しの見直し ・駆動回路に保護素子の追加 |
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コイル切断時に配線の浮遊容量による寄生振動が発生しコイル駆動素子を損傷する。 | |||
駆動回路の問題 | トライアック、サイリスタなどの漏れ電流が大きい素子で駆動している。 | ・駆動素子の低漏れ電流品への置き換え ・トランジスタへの置き換え |
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表3:復帰不良の原因 |
なお、接点の転移現象はリレーの開閉動作が接点電圧の位相に同期しているとAC電圧の開閉でも発生する時がありますので注意が必要です。
L負荷:インダクタンス、ソレノイド、リレー、モーター、マグネットスイッチなど磁気エネルギーを使用するもの
シリコーン*)ゴムなどに含まれる低分子シロキサンは常温での揮発性や浸透性が非常に高いのでプラシール型でも樹脂ケースの分子間スペースを伝って1カ月程度で機器内部に侵入します。
そして接点のアークエネルギーによって絶縁性の酸化シリコン(SiO2)膜になり接続を阻害します。
特にDC10〜30V時で1〜50mA程度の信号を切断するとアークの発熱量とクリーニングのバランスで発生する事例が報告されています(図1)。しかしその他の条件でも実機での確認評価は必要です。
この膜は非常に強固であり通常のセルフクリーニングでは除去できず、アークの度に酸化が進行して強固になっていきます。ですから機器内部で使用するシリコーンゴムについては低分子シロキサン含有の有無を事前に確認する必要があります。
低分子シロキサンとは主に10量体(D10)以下の環状シロキサンを指し、シール材や固着剤などに使われるシリコーンゴムや化粧品のシリコーンオイルなどに含まれます。時としてシリコンゴムと記述されることがありますが誤用です。(N量体:N個の基本分子が重合したもの)
*)シリコーンとシリコン
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