マイコンを使い込んでいる上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。2回にわたって、汎用マイコンにAIを実装するための開発ツール「STM32CubeMX.AI」を題材にして「マイコンを使った組み込みAIアプリケーション(組み込みAI)」について解説する
最近、展示会の来場者に「マイコンでAI(人工知能)を実現したいのだが?」と尋ねられることが多い。展示会来場者以外にもユーザーから「自社の製品にAIを組み込みたい」というリクエストを受けるようになった。
実際、最新の生活家電でもAI機能が組み込まれた製品が販売されている。例えば、洗濯機では「AIが洗い方や時間を自動で判断して、細かく設定」といった具合に、カタログに書かれている。
しかし、残念ながら汎用マイコンの能力ではディープラーニング(深層学習)を含むAIのフル機能を実装することはできない。
では、汎用マイコンが組み込みシステムの中で、どこまでのAI機能をサポートできるのだろうか? そして何ができるのだろうか? これから2回にわたって、汎用マイコンにAIを実装するための開発ツール「STM32CubeMX.AI」(STマイクロエレクトロニクス製)を題材にして「マイコンを使った組み込みAIアプリケーション(以下、組み込みAI)」について解説する(図1)
連載1回目(今回)は、「AIとは何か?」からはじめ、「身の周りのAI」を紹介し、さらに「組み込みAI」の特長について解説する。
連載2回目は、「組み込みAI」実現のステップと実際の「組み込みAI」について紹介する。
AIについては、数々の文献やWebサイト、さらには大学の一般公開講座やテレビ番組でも詳しく解説されている。
本記事はAIが何であるかを解説するのではなく、「組み込みAI」について解説することが目的であるので、AIについての詳しい解説は、他の情報源を参考にしてもらい、ここでは「組み込みAI」を知るために必要な基本的なAIの解説にとどめる。
AIを一言で言うと「コンピュータを使って理解や推論、問題解決など、人間の知能を人工的に実現したもの」である。
では、ここで言う「知能」とは何だろうか? 例えば、マイコンに一定のルールをプログラムして、ある情報を入力すると、決められたルールに従った情報を出力することができる。しかし、これでは「知能」とは言えない。「知能」を辞書で調べると「物事を理解したり判断したりする力」と書かれている。キーワードは「理解」と「判断」であり、前述の例で言うと、状況を理解し、さらに判断して、マイコンにプログラムするルールを作り出すことができないと「知能」とは言えない(図2)
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