今回からDC-DCコンバーターの信頼性に関して説明します。まず、DC-DCコンバーターの信頼性を予測する手法について、取り上げます。
電子機器の出現以来、ユーザーにとって、電子デバイスがどれくらいの期間、適切に動作するのかを知ることは極めて重要なことです。将来のことは誰にも分からないので、部品や組立品、あるいはデバイスの信頼性を予測する統計的手法が考えだされました。
電子部品や組立品の信頼性を予測するための最初の体系的なアプローチの1つは、一般にMIL-HDBK-217として知られる米国陸軍の「軍用ハンドブック−電子機器の信頼性予測」でした。この本の主な内容は、さまざまな部品の故障率を記録した巨大なデータベースで、これは、メリーランド大学が膨大な数の電気部品、電子部品、電気機械部品に対して行った現場での実証的故障解析に基づいています。
このハンドブックは、1995年にMIL-HDBK-217改訂版F、通知2と呼ばれる最終版が発行されるまで更新と改善が繰り返されてきました。今ではもう更新されていませんが、データと手法は今日でも、最も広く使用されています。
このハンドブックには、部品ストレス解析(PSA)と部品数解析(PCA)という2つの信頼性の予測手法が記載されています。PSA手法の方がより多くの詳細情報が必要で、測定データと暫定結果をその信頼性モデルに挿入できる場合は、通常、設計後期に適用可能です。一方PCS手法で必要となるのは、部品の数や品質レベル、アプリケーション環境といった最小限の情報のみです。MIL-HDBK-217の手法の最大の利点は、PCA手法により部品表(BOM)と予期される用途さえ分かっていれば信頼性を予測できるため、まだでき上がっていない製品の信頼性を数値化できることです。
ここで、
ΝC部品数(部品種別ごとの)
λC各部品の故障率(データベースに基づく基礎値)
πE環境ストレス要因(アプリケーションに固有)
πFハイブリッド機能ストレス(部品の相互作用による付加ストレス)
πQスクリーニング・レベル要因(標準部品公差または、スクリーニング前の値)
πL成熟要因(周知のテスト済み設計手法または新しいアプローチ)
計算によって、使用する各部品についての数値が出ます。それぞれの結果を全て加算していくと、総合的な信頼性が求められます。
No. | 部品 | 数量 | πP故障率 [10-6/h]TAMB=25℃ |
πP故障率 [10-6/h]TAMB=85℃ |
---|---|---|---|---|
1 | トランジスタ | 2 | 0.0203 | 0.0609 |
2 | ダイオード | 2 | 0.1089 | 0.5443 |
3 | 抵抗 | 3 | 0.0370 | 0.1716 |
4 | コンデンサー | 5 | 0.1699 | 1.7000 |
5 | トランス | 1 | 0.2256 | 1.9200 |
6 | PCB、PIN | 2 | 0.0092 | 0.0092 |
πP合計故障率10-6/h | 0.5708 | 4.4060 | ||
MTBF時間(MIL-HDBK-217F) | 1.751.927 | 226.963 | ||
条件(入力) | 公称入力 | 公称入力 | ||
条件(出力) | 全負荷 | 全負荷 | ||
故障率は、2つの故障の間隔(単位は時間)である平均故障間隔(MTBF)または最初の故障までの時間である平均故障時間(MTTF)で定義されます。
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