第5世代移動通信(5G)では、従来の移動体通信で使用されてきた周波数帯に加えミリ波が用いられることにより、チップセットの測定からモバイルデバイスの性能検証で、Over-The-Air(OTA)環境でのテストが必須となります。ここでは、5G OTAテストのセットアップに関して知っておくべきコンセプトを紹介します。
第4世代移動通信(4G)までは、無線デバイスを評価する際、有線ケーブルを使ったコネクテッド(有線)方法が主流でした。この測定項目には、RFパラメータのテスト、デバイス全体の機能/性能検証などとともに、モデムチップセットの評価も含まれていました。以前は、主にアンテナの性能テストとデバイスのMIMO(マルチ入力マルチ出力)性能測定でのみ用いられていたOver-The-Air(以下、OTA)環境、つまり無線でのテスト方法が、5Gミリ波デバイスの登場により無線業界にとってテクノロジーの劇的な変化を象徴するものになります。なぜなら、OTAテストがあらゆるテストケースで実行可能な唯一の方法だからです。
ミリ波周波数は、経路損失が大きく波長が短いため、電気的に可変な指向性アンテナ、通常はフェーズド・アレイ・アンテナが必要となります。また、多くの5Gデバイスでは、従来のLTEや周波数レンジ1(FR1)のモノポールアンテナに加えて、複数セットのミリ波アンテナも必要です。しかしながら、ミリ波アンテナは、RFフロントエンド(RFFE)アンプに直接接続(直結)しなければならないため、比較的低いギガヘルツ周波数と同じ方法ではデバイスをテストできません。そこで実際に電波を放射してテストする方法が必要になります。
従来のコネクテッド(有線)方法では、被試験デバイス(DUT)と測定ソリューションとの間に、正しく予想可能な伝送ライン、つまり同軸ケーブルを使用していました。OTAでは同軸ケーブルが無線リンクに置き換わり、テストソリューションの一部となるアンテナとDUTが直接通信します。不連続のないRF環境(つまり、伝送ラインが予測可能で、外部干渉が排除されている環境)を確保するには、電波暗室内でOTA接続を管理するのが最善の方法と考えられます。
一般的なOTA測定ソリューションは、RF測定機器と電波暗室が含まれており、電波暗室は以下で構成されています。
適切なセットアップを選択して必要な測定を行うために、エンジニアが考慮しなければいけない点がいくつかあります。最初に、電磁界の専門用語と経験則を簡単に確認しましょう。
アンテナからの距離が離れると、電磁界の動作と特性も変化します。上記の簡略化したモデルは、リアクティブ近傍界、放射性近傍界、放射性遠方界という3つの領域を示しています。OTA測定を実行する場合、DUTとプローブアンテナ間の距離については、各領域の特性を考慮しなければなりません。例えば、近傍界(near-field:NF)で測定する際には、NFの結果を対応する遠方界(far-field:FF)の値に変える変換手法が必要となります。さらに位相の補正あるいはDUTへの入力位相の制御も必要です。この図で、Rはアンテナからの距離、Dは放射しているアンテナのサイズ、λは波長を示しています(図1)
では、エンジニアがOTA測定セットアップを定義する際に検討すべき主な事項はなんでしょうか?
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