この文字が記載されたコネクターの先に、もう1枚の小さい基板があった。図2の右図のコネクターに接続され、小型のトランジスタが実装されていた。MC34036Aのデータシートを詳細に確認し、『5VE 5VB 5VC』のシルクの意味が分かった。MC34036Aの応用例を図3に示す。
図3はMC34063Aのデータシートに記載されたダウンコンバーター回路の例だ。出力電流が大きいときには外付けでトランジスタを接続している。E、B、Cは、図3に赤文字で記載した通り、そのトランジスタのエミッタ、ベース、コレクタを差していたのだ。これで参考回路が把握できた。また、出力が出なかったのは基板のコネクターが抜けていたからだった。小型の基板を接続し、24V電源を通電して出力端子の電圧や出力波形を確認した。
なんだ、この5V波形は! 測定した5DCVの出力波形は直流ではなかった。
最初にこの波形を見たときに測定ミスと思って何回か測定箇所を変えたが同じだった。5Vの電解コンデンサーを外して測定したら容量がほとんどなかった。図5に示す。
マルチファンクションテスターで測定すると、容量は20pFで完全に容量がなくなっていた。これで図4の波形が直流波形でなかった理由が分かった。パスコンを交換すると正常な直流のDC5V電圧波形が得られた。なお供給電源の消費電流はなぜか200mAが40mAに下がった。これで、タッチパネルの消費電流を確認すれば、電源基板内の部品の劣化状態を確認できる。
電源基板をタッチパネルに戻し、図1の状態で各部の電圧を測定すると正常にICの電源端子に5Vの電圧が出力された。これで修理が完了したと思われるので、客先に納品して動作確認を依頼した。翌日に顧客から『正常に動作した』と連絡があった。バックライトの不点灯とタッチパネルの操作位置がずれるという2つの不具合は解消できた。
このタッチパネルは修理前もある程度は動作していたようだ。しかし図4の5Vの電圧波形ではタッチパネルが正常に動作するはずはない。おそらくこのタッチパネルは長期間装置で稼働し、動作不良になったので取り外されていたものと思われた。
このタッチパネルを使用した機器は20年ほど稼働していたようだ。それにしても、DC5V電源の電圧波形がこれほどまで変わっていたことにはかなり驚いた。このパネルの修理は初めてだったが、修理前に消費電流を測定することで電源の劣化状況が分かり、非常に有意義な修理だった。
このタッチパネル「MT-250」は単品でも10万円を超えるかなり高価な部品で半導体関連の機器に多数使用されている。今回の不具合状況からすると、今後はこのパネルの修理依頼が増えそうだ。
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