修理を依頼された温調器の電源基板に隠れていた低レベルな設計ミスについて報告したい。
今回は国内大手メーカー製温調器の不具合解析に関する報告だ。今まで多種類の温調器を修理してきたが、過去に修理した温調器の中にも同じ設計ミスが隠れていた。
修理を依頼された温調器の同機種は5回以上修理しているが、通電して動作を確認したら正常だった。カバーを開け過去の修理で不良があった電源基板の電解コンデンサーを確認したが、特に目につく不具合はなかった。顧客から「電解コンデンサーを交換するように」という申し送りがあった。動作は正常で不具合は見当たらないのに「なぜ、このような依頼があるのか」と、少し疑問を感じた。もしかしたら今まで気づいていない不良が隠れているかもしれない。
疑問を感じたので、電源基板に実装されている全ての電解コンデンサーの動作を詳細に確認した。その結果、予想外の設計ミスが見つかった。まずは電源基板のハンダ面の写真を図1に示す。なお、メーカー名や製品名称を特定できないように配慮している。
図1には黒のサインペンで電解コンデンサーのマイナスの極性や外部の入力のメモを書き込んでいる。過去の経験で液漏れがあれば電解コンデンサーのマイナス端子付近に変色が見えるはずだ。図1ではコンデンサーには汚れは見つからなかった。しかし図1左下、赤丸で示した位置に黒く変色した部分があった。この部品は抵抗で電解コンデンサーではない。この部分の臭いを嗅いだら電解液のような匂いだった。なお、赤丸の下側に10μFの電解コンデンサーがある。小容量の電解コンデンサーなので急激な液漏れがあった可能性はある。
AC100Vを通電し、9個の電解コンデンサーについて、それぞれプラス端子のリップルをオシロスコープで測定し、劣化した電解コンデンサーを探した。その結果、図1赤丸付近の電解コンデンサー1個だけがリップルが大きかった。測定結果の写真を図2に示す。
図2は電解コンデンサーの電圧波形と電圧を測定したものだ。リップルは1V程度だが電圧はなんと−3.9Vだった。
電解コンデンサーにマイナス電圧がかかっている!!
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