LCRメーターの誤差は測定器本体だけではなく、ストフィクスチャやテストリードを含めて考える必要がある。またLCRメーターを装置に組み込んだ場合は配線によって生じる誤差や外来ノイズによるも考慮する必要が生じる。
LCRメーターでは誤差を少なくするための補正機能が搭載されている。ここでは誤差を少なくする方法を紹介する。
LCRメーターに取り付けられたテストフィクスチャやテストリースが持つインピーダンス成分を除くため、試料が取り付けられる点でインピーダンスがゼロ(=短絡)とインピーダンスが無限大(=開放)の状態を作って測定前に補正が行えるようにする。
インピーダンスが無限大の状態での補正をオープン補正と呼び、テストフィクスチャやテストリードの浮遊容量や漏れ抵抗(絶縁抵抗)を補正できるようにする。これらの値は配線の配置によって変化するため、試料を測定する場合と同じ状態で補正を行う。テストリードでの補正では先端でHpとHcの接続およびLpとLcの接続がされていることが必要である。
インピーダンスがゼロの状態での補正をショート補正と呼び、テストフィクスチャやテストリードの接触抵抗や接続ケーブルのインピーダンスを補正する。残留抵抗を小さくするために太い電線や金属板で短絡を行う。ケーブル間の結合による変動を少なくするために実際に試料を測定する場合と同じ状態で補正を行う。
ロード補正は複雑な残留成分が存在した場合などでオープン/ショート補正を行っても誤差が無視できないときに標準器など正確な値が分かっている部品を使って補正を行うことである。
測定器メーカーが書いた資料には「測定器メーカーが提供するテストフィクスチャやテストリードを使う場合はロード補正を行う必要はない」という記述はあるが、ロード補正が必要であるかは、測定器の性能や測定する周波数範囲によって異なる。ロード補正には、周波数、信号レベル、測定レンジなどの特定条件下で発生する小さな誤差(例えば浮遊容量が起因の誤差)を軽減する効果がある。測定に使用する測定器の取扱説明書やメーカーが提供する技術資料などを参考にして、補正を行うか判断する。
LCRメーターを装置に組み込んで使う場合や測定対象の試料が大きく、LCRメーター本体に長いケーブルを接続しなければならないときに使う補正である。
ケーブルを延長することによりケーブルの配線抵抗と浮遊容量の影響を受けて、試料に印加される信号の振幅と位相に誤差が生じる。
これらを補正するためにLCRメーターではケーブル長を設定して補正できる機能を持っている。
LCRメーター本体の測定確度は「測定速度、測定周波数、測定レンジ、測定信号レベル、DCバイアスの有効/無効、ケーブル長、測定レンジ、周囲温度、試料の測定値」から算出されるので、測定器メーカーが製品ごと仕様書に確度の算出方法を示している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.