コンデンサーやインダクタは直流バイアスを加えると特性が変化する。このため試料に直流電圧や直流電流を加えて、その上に交流信号をLCRメーターから印加して測定する方法がある。
直流電圧や直流電流を印加するには外部に直流電源を用意する。接続のためのジグは測定器メーカーから供給されるものもあるが、大電流を印加して測定を行うパワーエレクトロニクス機器向けのインダクター(リアクトル)の評価では大型の直流電源が必要になるため計測システム装置となることがある。
ここでは直流電圧を印加してコンデンサーの評価を行うためのアダプターを事例として示す。
強誘電体を用いた高誘電率系のセラミックコンデンサーでは直流電圧の印加によって誘電体中の自発分極が電界の方向に束縛されるため静電容量が変化(減少)する特性が見られる。
低誘電率系のセラミックコンデンサー、アルミ電解コンデンサー、タルタル電解コンデンサー、フィルムコンデンサーなどではDCバイアス特性は見られない。
ダイオードの接合容量は逆バイアス電圧の影響を受けるため、可変容量ダイオードの測定ではDCバイアス電圧を設定して測定する。
またインダクタンスではコア材に磁気飽和特性があるため直流電流を印加するとインダクタンスが低下する現象がある。下記にはパワーエレクトロニクス機器に使われるインダクタンス(リアクトル)のDCバイアス特性を示す。
電子部品以外にフィルムや液体などの誘電率の測定や磁性材料の透磁率を測定するためにLCRメーターが使われることがある。このような測定には専用のテストフィクスチャが使われる。
また、電気化学や材料の試験でインピーダンス特性を測る場合も特殊な周辺機器が必要となる。
材料の研究など専用のテストフィクスチャが必要な場合は自作するか、知識を持ったテストフィクスチャを作る企業に依頼するのがよい。
コンデンサーやインダクタンスを大量に生産する工場では部品の良否判定やクラス別けを行うための自動検査装置が数多く使われている。この自動検査装置には高速でインピーダンスを測ることができるLCRメーターが組み込まれている。
自動検査装置は長時間連続して運転するため、信頼性の高い作りになっている。
コンデンサーの生産ラインでは耐圧試験を行った後に容量の測定を行う。LCRメーターでコンデンサーの容量を測定する場合は事前に放電を行う必要があるため、生産ラインでは容量測定の試験をする前にコンデンサーの放電を行う工程がある。しかし放電が十分でない場合はLCRメーターが破損することがある。LCRメーターが破損する要因として、このような場合が多いので下記のような治具をLCRメーターと試料のコンデンサーの間に入れると破損を防げる。
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