主に数メガヘルツまでの低周波の交流インピーダンスを測るLCRメーターについて解説する本連載。今回は、「LCRメーターの構造」「LCRメーターで表示できるパラメータ」「試料との接続」「測定誤差の考え方」について説明する
本記事は、計測器専門の情報サイト「TechEyesOnline」から転載しています。
現在市販されているLCRメーターの多くは自動平衡ブリッジ法である。
下記にはエヌエフ回路設計ブロックの5.5MHzまでの交流インピーダンスを測定できるLCRメーター「ZM2376」のブロック図を示す。
1ミリヘルツ(mHz)から5.5メガヘルツ(MHz)まで発生可能な発振器を搭載して、最大5VまでのDC電圧を重畳して測定するために内部にDCバイアス電源が搭載されている。発振器の振幅をゼロにして、DCバイアスの電圧設定だけで測定を行えば直流での抵抗値が得られる。
測定部は電圧と電流の信号をA-D変換器で取り込み、その後の信号処理はデジタル回路とファームウェアによって演算を行いさまざまな測定パラメーターとして表示できるようになっている。
このLCRメーターは汎用高性能型ではあるが、生産ラインでの利用も可能としているため、PLCなどの制御装置との接続が容易なハンドラインタフェースが搭載されている。
LCRメーターでは試料に印加した交流信号の電流と資料の両端の電圧の信号をベクトル電圧計で測定してそれぞれの信号の大きさと位相差を求める。測定結果は演算によって設定した等価回路のパラメーターやその他の試料の特性を示すパラメーターとして表示することができる。
表示できるパラメーターはLCRメーターの機種によって異なるが、下記にはエヌエフ回路設計ブロックのLCRメーター「ZM2371/ZM2372/ZM2376」の事例を示す。
記号 | 名称 | 単位 | 意味 |
---|---|---|---|
|Z| | インピーダンス | Ω | 電流の通りにくさ |
|Y| | アドミッタンス | S | 電流の通りやすさ |
L | 自己インダクタンス | H | 電流の変化を妨げる逆起電力を発生する能力 インダクタンスLpもしくはLs |
C | キャパシタンス (容量、静電容量) |
F | 電荷を貯め込む能力 容量CpまたはCs |
R | 抵抗 | Ω | インピーダンスの実数部 抵抗RpもしくはRs |
G | コンダクタンス | S | アドミッタンスの実数部 |
Q | 回路の良さ | - | エネルギー散逸の少なさ |
D | 損失係数 | - | エネルギー散逸の多さ =tanδ |
θ | 位相角 | deg rad |
インピーダンスまたはアドミッタンスの位相角 電圧と電流の位相角に等しい |
X | リアクタンス | Ω | インピーダンスの虚数部 |
B | サセプタンス | S | アドミッタンスの虚数部 |
Rs | 等価直列抵抗 | Ω | =ESR |
Rp | 等価並列抵抗 | Ω | |
Lp | 等価並列インダクタンス | H | |
Rdc | 直流抵抗 | Ω | |
LCRメーターではこれらの測定パラメーターから選択して表示するようになっている。
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