今回はEDLCにおいて重要視される特性や注意事項、寿命計算の考え方について説明をしたいと思います。
前回は電解液や電気二重層キャパシター(EDLC)の製造の概要について説明をしました。今回はEDLCにおいて重要視される特性や注意事項、寿命計算の考え方について説明をしたいと思います。
主にバックアップ用途としてみた場合の特性をまとめました。電力平坦(たん)化やエネルギーの一時的な吸収用としてみた場合には重要視される特性も異なってきますので用途に合わせた規定が必要です。
1. 容量
電気二重層コンデンサーは種々の時定数を持つ充電回路の集合体です。従来のV-I法からの手法では時定数のバラツキが大きく正確に容量を測定できません。
定電流(1mA/Fなど)で放電させて電圧降下から算出します。
2. 内部抵抗
【交流法】1KHzの信号を与えた時の電圧・電流から求めます。 RAC=VAC÷IAC
【直流法】容量測定時のIRドロップ(ΔV)から直線近似で求めます。 RDC=ΔV÷I
一般にRDC>RACですからRACの値だけではバックアップ時の最低電圧に支障が出る場合があります。
3. 最大出力密度(Pdm)
単位体積当りの取り出せる瞬時の最大電力です。
内部抵抗Rinの電源から最大電力を取り出せる負荷抵抗はRL=Rinの時で、負荷RLのエネルギーPRLは瞬時電力PMAXの1/2になります。PMAX=V2/(Rin+RL)=V2/(2Rin)であり、PRL=PMAX/2ですから、PRL=1/4×V2/Rinになります。
∴Pdm=1/4×定格電圧2÷(Rin・体積)
4. エネルギー密度・電力密度(Edm)
EDLCから取り出せる最大エネルギーの体積密度です。
Edm=1/2×CV2/(体積・3600)[Wh/体積]
5. 放電特性の温度依存
①周囲温度が上がるにつれて自己放電電流は増加します。
②低温ほど、初期の電圧ドロップの影響が現れます。これはイオンの移動度が遅くなり完全充電にかかる時間が長くなるためです。
6. 充電電流の制限は不要
電気二重層コンデンサーへの充電電流は自己内部抵抗Rで制限されるため、充電時においてコンデンサーを保護する目的で、充電電流を制限する必要はありません。ただし、定電圧回路で充電すると回路の過電流保護回路が動作する可能性があります。
7. 電圧保持特性への充電時間の影響
完全充電されていない場合は充電時間によって初期の電圧降下に差があります。
これは、内部等価回路の充電時定数のバラツキにより内部の充電量に差が生じるためです。(100%充電では差はなくなります)
*1)図の出典:パナソニック AIS社キャパシター事業部 電気二重層コンデンサ テクニカルガイド TGGC-J7.7
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.