電磁気学入門講座。今回は、「コアの飽和」について説明していきます。
コアの飽和点を計算する方法があります(図1のB-H曲線の直線への遷移点で、磁界は増加しても磁束密度が増加しなくなる点)。しかし、変数が多いので、このシミュレーションは難題です。実際のところ、メーカーのデータを利用して、近似の限界を見つけ、それ以下にとどまるようにするのが良策です。
飽和を避けなければならない主な理由は、コアが飽和するとインダクターとして機能しなくなるからです。巻き線を流れる電流は、巻き線のDC抵抗(DCR)によってのみ制限されるので、巻き線電流はV/DCRが最大値になります。図2は、急激な飽和に至ったコイルの電流の変化を示しています。
コアの飽和点は、コア材料、磁束密度、励磁周波数に依存しますが、通常はメーカーのデータにSOAR(安全運用範囲)のガイドラインが提示されています。
コア | ヒステリシス損失 | 最大磁束密度(Bsat)代表値 | 最大周波数 |
---|---|---|---|
標準フェライト | 低 | 0.5テセラ | 8MHz |
高性能フェライト | 低 | 1.0テセラ | 3.5MHz |
鉄合金 | 中 | 1.2テセラ | 1MHz |
鉄粉 | 高 | 1.5テセラ | 0.3MHz |
飽和したコアはインダクターとして機能しませんが、巻き線はより多くの電力を消費し、コアが過熱する原因になります。インダクターを過剰にドライブすれば、コア温度は最終的にキュリー点に至るまで上昇し続けます。キュリー点は、磁性が完全にゼロになり透磁率をほとんど喪失する温度です。高温になると磁区が強引に途絶され、磁界が整列不能になることが、透磁率が突然変化するメカニズムです。図3は、温度上昇による突然の変化を示しています。
無用のコア飽和を避けるには、注意深い設計が必要です。例えば、連続モード動作のDC-DC降圧コンバーターのインダクターでは、DCオフセット電流の上に三角波のAC電流が重畳されます。コアの電流は決してゼロにはならず、この連続的な電流はコアに「偏り」を与え、B-H曲線をひずませ、正の周期にコアは簡単に飽和に至ります。コアの電流は決してゼロにはならず、この連続的な電流はコアに「偏り」を与え、B-H曲線をひずませ、正の周期にコアは簡単に飽和に至ります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.