今回は、正電圧出力に比べてそれほど一般的ではない負電圧出力(または反転)DC-DCコンバーターソリューションの基本を解説します。
電子機器は、主として正の電圧レールを電源に使用しますが、場合によっては、いくつかの負の電圧レールも使用されます。そのため、負電圧出力(または反転)DC-DCコンバーターソリューションは、正電圧出力のものほど一般的ではありません。それにもかかわらず、ファクトリーオートメーション(FA)、ビルオートメーションおよび、通信システムの高性能デバイス(高速D-Aコンバーター、オペアンプ、RFパワーアンプ、AFE[アナログフロントエンド]、GaN FETゲートドライバー、IGBTゲートドライバーなど)に給電する場合は、負電圧レールが必要になります。
従来のデバイスの多くは、通信用の外部レベルシフト回路を必要とするため、設計者は負電圧ソリューションを探すという困難な課題に直面します。その上、それらのデバイスは旧式で、効率が低く、複雑でサイズも大きいケースが多いのです。本稿では、従来のソリューションの欠点について詳しく説明したあと、その欠点を解消する負出力DC-DCソリューションの一例を紹介します。
通常の電源システムでは、グランド基準、またはGNDがその最低電位となります。正出力DC-DCコンバーターの場合、グランド基準は単にGND(0V電位)です。その入出力信号は当然このグランドが基準になります。システムコントローラーは、簡素かつ直接的にそれらの入出力端子を介してDC-DCコンバーターと通信します。
図1は、そのようなシステムを示しており、システムマイクロコントローラーは、コンバーターのEN(イネーブル)端子を駆動してオンおよびオフにします。また、コントローラーはPGOOD(つまり、RESET)端子を介してコンバーターの状態を読み取り、コンバーターの電力出力が安定化の範囲内でシステム全体を起動する準備が整っているかを判断します。話を簡単にするために、ここでは1つのDC-DCコンバーターのみを示していますが、原理は複数の正電圧レールを備えたシステムにも該当します。
負電圧出力DC-DCコンバーターが使用される場合、システムコントローラーとの通信は簡単ではありません。コンバーターの入出力端子はその最低電位が基準になりますが、この場合、それはシステムグランド(GND)ではなく負の出力電圧になります。
負電圧レールを使用する場合、設計者はシステムマイクロコントローラーがDC-DCコンバーターと通信するためのレベルシフト回路を実装する必要があります。図2は、2つのレベルシフト回路を備えたシステムの回路図を簡略化して示しています。
ここでも、話を簡単にするために、1つの負電圧出力DC-DCコンバーターのみを示していますが、原理は複数の負電圧レールまたは正負の両方の電圧レールの組み合わせを備えたシステムにも当てはまります。個々の負電圧出力DC-DCコンバーターの各入出力端子に対して1つのレベルシフト回路が必要です。
レベルシフト回路は大きいため、設計者にとって課題となります。さらに、従来の負電圧出力DC-DCコンバーターソリューションは複雑で非効率的であるため、別の課題も生じます。
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