図4は制御基板で、クリーニングした後にオペアンプの「LM324」をソケットから外したところだ。
修理依頼主から渡されたメモにあった「ER9エラー」は、販売代理店の回答によると温度センサーのアナログ信号に関するエラーということだった。温度センサーのコネクターの近くにオペアンプのLM324があったので、ICソケットから外したところ、びっくりする事実を目の当たりにした。図4を見て気づいた読者もいると思うがICソケットの4ピンにコンタクトがなかった。4ピンは+Vcc端子だ。これでは、オペアンプが正常動作することはできないだろう。制御基板のICソケット周辺の拡大図を図5に示す。
図5でICソケットの4ピン部分を赤丸で示しているように、コンタクトの金属が見えない。なぜこのような実装が行われていたのかが信じられなかった。この状況ではオペアップの電源ピンが固定されず下側の端子の先端に触っているだけだ。これでは機器が振動するとオペアンプの電源が切れて、正常に動作しないことがあるのも当然だ。ICソケットのコンタクトに金属がないことが分かり、全ての疑問が解消された。
この寒天製造機の根本的な不具合原因は、ICソケットのコンタクトに金属がないというICソケットの不良で、その結果、オペアンプの電源が入ったり切れたりして正常に動作しなかった。
しかし、ICソケットの不良は基板の製造時に3回は見つけるチャンスがあったはずだ。それは、基板に実装するICソケットの検査時、ICソケットを実装した後の検査時、オペアンプをICソケットに実装する時の3回だ。特にICをソケットに実装する時には、ICソケットの不良を間違いなく見つけることができたはずだ。恐らく検査治具で基板が正常に動作したため、良品判定を安易に下してしまったのだろう。しかし、機器の内部にはモーターの回転部があり、基板に振動が加わることは十二分に想定できる。製造担当と検査担当は、品質管理部門には相談せずに基板を良品にしてしまったのだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.