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SiC MOSFETを効率よく駆動するゲートドライバーICの選び方デバイスの特性を生かす(1/2 ページ)

シリコンMOSFETとは大きく異なる特性を持つSiC MOSFET。SiC MOSFETの特性を引き出すためには、最適なゲートドライバーICを選択することが重要になる。

» 2023年03月13日 11時00分 公開

 SiC(シリコンカーバイド)MOSFETは、従来のシリコンMOSFETやIGBTと比較して、高電圧スイッチング電源アプリケーションで明確な優位性があります。シリコンMOSFETでは高周波(数百kHz)のスイッチングが可能ですが、1000V以上などの非常に高い電圧では使用できません。一方、IGBTは高電圧で使用できる反面、「テーリング電流」と低速ターンオフのため、低周波スイッチング用途に限定されます。

 SiC MOSFETは双方を両立でき、高電圧での高周波スイッチングが可能です。ただし、SiC MOSFETは固有のデバイス特性を備えているため、ゲートドライバー回路にはシリコンMOSFET使用時とは異なる要件が求められます。これらの特性を理解することで、設計者はデバイスの信頼性と全体的なスイッチング性能を改善できるゲートドライバーを選択できます。本稿では、SiC MOSFETデバイスの特徴と、ゲートドライバー回路に課せられる要件を説明した上で、これらの検討事項とその他のシステムレベルの考慮事項に対処できるICを提案します。

SiC MOSFETの特性

 SiC MOSFETはシリコンデバイスと比較して、トランスコンダクタンス(ゲイン)が低く、内部ゲート抵抗が高く、またゲートのターンオンしきい値は2V以下になることがあります。その結果、オフ状態時はゲートをグランドより低く(通常−5V)する必要があります。SiCデバイスは、オン状態時にはオン抵抗(RDS)を下げるために、一般的に、18〜20Vの範囲のゲート-ソース間電圧(VGS)が必要になります。SiC MOSFETを低いVGSで動作させると、高いRDSのために熱ストレスや障害が発生する可能性があります。その他、オン抵抗、ゲート電荷(ミラープラトー)、過電流(DESAT)保護などの要素も、ダイナミックスイッチング特性に直接影響を与える可能性があるので、ゲート駆動回路を設計する際は、考慮する必要があります。以下で、簡単に説明していきます。

オン抵抗

 VGSが低いと、一部のSiCデバイスのオン抵抗対ジャンクション温度特性が放物線のようになることがあります(内部デバイス特性の組み合わせのため)*)

*)onsemiの「SiC M1 MOSFET」「SiC M2 MOSFET」がこれに該当します。

 VGSが14Vのとき、RDSは温度上昇に伴って抵抗値が減少する負の温度係数(NTC)特性を備えているように見えます。このSiC MOSFET固有の特徴は、低ゲインに直接起因するもので、低いVGS(負のTC)で動作するSiC MOSFETを2個以上並列に配置した場合、壊滅的な結果が生じる可能性があります。従って、SiC MOSFET間の並列動作は、VGSが信頼できる正のTC動作を保証するのに十分な場合(つまりVGSが18Vより高い場合)にのみ推奨されます。

図1:onsemiの「SiC M1 MOSFET」「SiC M2 MOSFET」のオン抵抗対ジャンクション温度 図1:M1またはM2 SiC MOSFETのオン抵抗対ジャンクション温度[クリックで拡大] 出所:onsemi

 新しい「SiC M3 MOSFET」は、全てのVGSおよび動作温度範囲において正の温度係数を示します。

図2:「SiC M3 MOSFET」のオン抵抗対ジャンクション温度 図2:「SiC M3 MOSFET」のオン抵抗対ジャンクション温度[クリックで拡大] 出所:onsemi
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