メディア

カバーを開けて不具合の原因を特定 ―― 7.5kWインバーターの修理(2)Wired, Weird(1/2 ページ)

今回は7.5kW出力インバーターの修理の続きだ。このインバーターはIGBTパワーモジュールが過熱破損し、整流電源の+端子とモーター駆動のU端子が短絡していた。不具合を確認するため取り出したIGBTモジュールのカバーを開けた。

» 2023年09月19日 11時00分 公開
[山平豊(Rimos)EDN Japan]

⇒連載「Wired, Weird」バックナンバー

 今回は7.5kW出力インバーターの修理の続きだ。修理を依頼された7.5kWのインバーターは汚れが固着しファンが回らなくなったことでIGBTパワーモジュールが過熱破損し、整流電源の+端子とモーター駆動のU端子が短絡していた(前回記事)。不具合を確認するため取り出したIGBTモジュールのカバーを開けた。図1に示す。

図1:修理依頼を受けたIGBTパワーモジュール 図1:IGBTパワーモジュール内部[クリックで拡大]

 図1はIGBTパワーモジュールで、カバーを開けて配線面を確認した。その上にモジュールの回路図を置いた。図1中、赤四角で囲ったIGBTのコレクタに穴が空いていた。下層の電源と短絡しているようだ。穴が空いた箇所の拡大写真を図2に示す。

5/6/7ピン部分の拡大写真(左)とモジュール内右側の写真(右) 図2:5、6、7ピンのIGBTの拡大写真(左)とモジュール内の右側の写真(右)[クリックで拡大]

 図2左は5、6、7ピンのIGBTの拡大写真で、IGBTが熱で変形し、Gate7ピンの配線も切れていた。図2右はモジュール内の右側の写真だが、熱で変色していることが分かる。

 念のためテスターでモジュールの5ピンU端子と14ピン電源端子を確認したが、やはり短絡していた。最初に見た端子台での短絡の現象と一致し、IGBTが不良だという判断に間違いはなかった。あとは手配した部品が届くのを待つしかない。部品を待つ間に、インバーターの電源を生成する電源回路を確認した。電源制御IC「FA13844」とその応用回路例を図3に示す。

電源制御ICのFA13844(左_中央)、応用回路例(右)電源 図3:制御ICのFA13844(左_中央)、応用回路例(右)[クリックで拡大]

 図3左の中央にあるICが電源制御ICのFA13844だ。図3右はその応用回路例だ。このICはよく見かける電源制御ICで、電源の整流部からICの起動電流を560kΩの高抵抗で受け、22μFのコンデンサーに充電する。この電圧が10V程度になると起動を開始して、FETのゲートに電流を流してトランスをスイッチングする。同時に、トランスの二次コイルから電圧が発生し22μFのコンデンサーを充電して連続でスイッチング動作が可能になる。出力電圧は2次側のシャントレギュレーターで監視され、出力電圧が高くなるとフィードバックがかかって、FETの駆動時間を短くして出力電圧を調整するように動作する。22μFのコンデンサーが、この電源の心臓部分であり、このコンデンサーが劣化し容量低下やESR(等価直列抵抗)が高くなるとFETの駆動電流が減って出力電圧が不安定になる。

 図3ではFA13844の左側にあるセラミックコンデンサーが心臓部のコンデンサーだった。この部品には20年ほど前までは電解コンデンサーが使用されていたため、長期間動作させると電解コンデンサーは劣化してしまい電源の能力が低下していた。電源出力が不安定になった場合は、このコンデンサーを調べるとよい。このインバーターはセラミックコンデンサーが使用されていたので、劣化はないだろう。ただ、老婆心ながら耐圧が50Vの10μFのセラミックコンデンサーを追加した。図4に示す。

追加したセラミックコンデンサー(中央) 図4:追加したセラミックコンデンサー(中央)[クリックで拡大]

 図4中央のFA13844の後ろに10μFのセラミックコンデンサーを追加して、制御電源を補強した。これで電源制御ICはより安定して動作するだろう。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.