筆者は60歳から修理の仕事を始め、PFC電源の修理も多数経験した。PFC回路の修理では電解コンデンサーの容量がなくなり、FETが短絡破損していることに遭遇して、吃驚した。幸いにも日本製のPFC電源では焼損事故はなく、ヒューズが切れていた。このPFC電源の破損パターンははっきりしていて、ヒューズと電解コンデンサーとFETをセットで3個を交換すれば修理可能だった。PFC電源の参考回路図を図2に示す。
図2はPFC電源の整流部の参考回路図だが米国の資料と思われる。左側にAC電源を接続しノイズフィルターと突入電流防止のパワーサーミスター(RT1)を通しダイオードブリッジで交流を整流。チョークコイルをFETでスイッチングして、発生した逆起電力で電解コンデンサーを充電し、DC385Vの整流電圧を生成していた。
PFC回路の弱点は、チョークコイルで生成した電流で電解コンデンサーを高周波で充電していることにあった。電解コンデンサーのESR(内部等価抵抗)に高周波電流を流すと電解コンデンサーの温度が上昇し、内部の電解液が揮発して10年程度の稼働で容量が低下してしまう。容量が低下しても、電源は装置の内部の負荷へ電力を供給しているため、AC電源から取り込む電流量が徐々に増加する。その結果、チョークコイルを駆動しているFETの電流量が増えて、過電力になってFETは過熱して短絡破損してしまう。
FETが短絡破損したとき、実装された部品が焼損する前にヒューズが切れれば、大きな問題は発生しない。日本のメーカーはFETが短絡破損することを想定し、事前にこれらの評価試験を実施していたと思われる。
実際に焼損事故が発生した電源と焼損したチョークコイルの写真を図3に示す。
図3で左側に外したチョークコイルがある。中央には外したチョークコイルを実装した跡の基板の表面が黒く焼けているのが見える。知人からの連絡で、10Aのヒューズも切れて、チョークコイルは黒く焼けて断線しているこということだった。
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