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TSMCのGaN撤退が示唆することGaNのビジネスモデルはIDMが強いのか(1/2 ページ)

TSMCが2027年7月までにGaNファウンドリー事業から撤退すると決定した。これは、GaNパワーデバイスのビジネスモデルにとって何を意味しているのか。

» 2025年08月06日 15時30分 公開
[Majeed AhmadEDN]

 TSMCが窒化ガリウム(GaN)ファウンドリー事業から撤退するというニュースは、半導体業界に衝撃をもたらした。それにより、Infineon Technologies(以下、Infineon)のような垂直統合型デバイスメーカー(IDM)がチャンスをつかみ、その空白を埋めるための土台を構築することになるとみられる。

 技術/業界メディアは、GaNパワーデバイスの製造が既存のパワー半導体とどのように異なるのか、そしてなぜファウンドリーサービス向けに強力な需要を生み出さないのか、といった話題で持ちきりだ。また業界観測筋は、TSMCが撤退した要因の1つとして、中国のGaNファブからの価格圧力が高まっていことを挙げる。

 こうした点について明確にするため、米国EDNは、Infineonのシニアバイスプレジデント兼ビジネスラインGaNシステム部門担当ゼネラルマネジャーであるJohannes Schoiswohl氏に話を聞いた。EDNが「GaN製造は、主流のシリコン製造とはどのように異なるのか」と質問したところ、同氏は「まずはシリコンウエハーを用いて、その上にGaNをエピタキシャル成長させるため、基本的にはそれほど違いはない」と述べている。

Infineon TechnologiesのJohannes Schoiswohl氏 出所:Infineon Technologies Infineon TechnologiesのJohannes Schoiswohl氏 出所:Infineon Technologies

 また同氏は「専用のエピタキシャル装置を使用して、シリコン基板上でGaN層を成長させるプロセスを実行するという点が、大きな相違点だ。それ以降は、GaNのエピ層が成長した時点から、シリコン製造と同様のプロセス/ツールを使用する」と付け加えた。

 中国のInnoscienceは、GaN-on-Silicon専用工場を稼働させている世界最大の8インチGaN IDMであると主張するが、Infineonは、リスク分散しながら300mm GaNウエハー製造にも力を入れている。2025年末までには同社初となる300mm GaNのサンプルを生産し、2026年には量産を開始する予定だという。

 それによりInfineonは、業界で初めて既存の量産インフラで300mm GaNパワーウエハー技術の開発に成功した半導体メーカーとなるだろう。Schoiswohl氏は「われわれが6インチから8インチへ、そして今や12インチ(300mm)へと迅速に移行できたのは、既存のシリコン装置を活用することができたからだ。これは、設備投資の観点からも素晴らしいことだといえる」と述べている。

 また同氏は「非常に新しいのが、300mmエピ装置だ。300mm製造への移行は、解決しなければならない技術的な課題が非常に多いため、極めて難しい。シリコン層上で形成するGaN層は、結晶構造が異なるため、さまざまなひずみや不一致が生じる。さらに、ウエハー破損の可能性も非常に高い。つまり、300mm GaN製造には、エンジニアリングに関する大量のノウハウがつぎ込まれることになる」述べる。

 InnoscienceのCEOであるWeiwei Luo氏は、Star Market Dailyに掲載されたレポートの中で、12インチ/300mm GaNウエハーの商用化実現を阻む重大な障壁が存在することを認めている。特に、300mm GaNエピタキシーをサポート可能なMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置の不足を指摘する。MOCVDは、GaN層のエピタキシャル成長において中核を担う装置だ。

300mm GaNウエハー[クリックで拡大] 出所:Infineon Technologies 300mm GaNウエハー[クリックで拡大] 出所:Infineon Technologies

 Schoiswohl氏は、300mmウエハー向けのMOCVD装置に関して、Infineonが現在まだ初期の段階にあるということを認めており、「われわれはMOCVD装置メーカーと密接に協業しているところだ」と述べている。

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