TSMCの撤退は「なぜファウンドリーモデルはGaN分野で勢いを失っているのか」という疑問を提示する。InnoscienceのCEOであるLuo氏によると、パワーGaNデバイスは、設計とエピタキシー、プロセス、アプリケーションとを密接に連携させる必要があるため、既存のファウンドリーモデルにはあまり適していないという。IDMモデルは機敏に対応できるが、ファウンドリー/クライアントモデルはそこで苦戦するのだ。
InfineonのSchoiswohl氏は「GaN製造は収益性が低いわけではないが、確実に価値を創造することが求められる。第一に、コスト競争力が不可欠だ。積極的にコストを削減する必要があり、そのためにはコスト効率の高い製造技術を確立しなければならない。今回の場合は、それが300mm GaNウエハーだ」と述べている。
第二に、InfineonのようなIDMは、システムレベルでイノベーションを起こすことができる。Schoiswohl氏は「単にGaNトランジスタを開発するだけでは不十分だ。ゲートドライバーやコントローラーを確保し、最大の価値を提供できるシステムの構築方法を実証する必要がある」と述べる。
エンジニアは、最適化されたコントローラーとゲートドライバーを用いることで、システムコストを低減することが可能なGaNソリューションを実現できる。それにより、GaNが有意義かつ収益性の高い事業になるのだ。しかしこれは、ファウンドリーにとって、IDMの場合よりもはるかに難しいことである。
Schoiswohl氏は「300mmの実現とシステムレベルのアプローチに注力することで、GaNのコストは最終的にシリコンと同程度になるはずだ。製品レベルでの進化がシステムレベルのイノベーションをもたらし、ゲートドライバーとコントローラーICが高周波数実装や新しいトポロジー向けに最適化されるようになる」と述べる。
InfineonはGaN製造を強化しているが、Schoiswohl氏は、GaNの性能が設計の観点から大きく進化するとみているようだ。「特定のフォームファクターにおいて、寄生容量とオン抵抗が大幅に減少するだろう」と述べる。
それは次に、デバイスが1つのダイに解析的に統合された、高電圧双方向スイッチを実現できるようになるということだ。双方向にオンオフ切り替えが可能なため、数々の新しいトポロジーを実現することができる。
TSMCがGaN製造事業から撤退したことで、IDMはこのパワーエレクトロニクス市場の勝者になるのだろうか。GaNの重鎮であるInfineonは、300mm GaNのロードッマップを計画通りに実行できるのだろうか。他のファブもTSMCの撤退に追随するのだろうか。こうした疑問は、GaN市場の動向をますます興味深いものにしている。
【翻訳:田中留美、編集:EDN Japan】
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