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ON/OFFコンバーターの制御不安定問題(1)エネルギーの出入りを図式で理解するたった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(27)(1/3 ページ)

今回は電流制御型、電圧制御型にかかわらずON/OFF型コンバーターが持つ潜在的な不安定要素について説明します。状態平均化法の結果の意味を図式解法を用いた解釈を試みます。

» 2026年03月26日 11時00分 公開

 前回はサブハーモニック発振の対策としてスロープ補償の原理と補償量について説明しました。当然ながらこのスロープ補償はPWMのONモード時のみ行われ、1サイクルごとにリセットされます。
 今回は電流制御型、電圧制御型にかかわらずON/OFF型コンバーターが持つ潜在的な不安定要素について説明します。この現象は既に状態平均化法と呼ばれる数学手法で解析、説明されていますが本シリーズでは状態平均化法の結果の意味を図式解法を用いた解釈を試みたいと思います。

*ON/OFF型コンバーターとはスイッチON時にコアにエネルギーを蓄積し、OFF時に負荷に磁気エネルギーを放出する型のコンバーターの総称です。降圧型はON時にも負荷にエネルギーを供給しますのでON/ON型と呼ばれます。

制御不安定問題

 本連載で取り上げた3種類のDC-DCコンバーターは基本的な伝達関数として表1に示す2次遅れ系の周波数特性を持ちます。
 時比率δの変化に対する伝達関数は昇圧型や反転型などのON/OFF型のコンバーターでは表1図1下段のように周波数が上昇するにつれて利得が上昇する1次のハイ・ブースト(+20db/Dec)特性になります。

図1:(1+s)と(1−s)のボーデ関数[クリックで拡大]

 ハイ・ブースト回路としてよく引用される微分回路は(1+S)型の周波数特性を持ち、利得は周波数が増加するにつれて上昇し、同時に位相周波数特性は図1の位相青のように位相が進む特性を示します。
 ですが、ここで取り上げるON/OFF型コンバーターのδの変化の周波数特性は(1−S)型と言われ、図1の位相赤のように「利得の上昇とともに位相が遅れる」という一風変わった周波数特性を示します。表1にこれらの特性の比較表を示します。

 このようにON/OFF型コンバーターでは基本特性としての2次特性(−40dB/Decの減衰特性と2次の遅れ)とδ変化の(1−S)型の特性(+20dB/Decのブースト特性と1次の遅れ)が直列に接続されるので利得は−20dB/Decの減衰特性でありながら位相は3次の遅れといった奇妙な特性になります。
 実際の電源回路ではこの特性を考慮して補償定数を適切に設定しないと減衰特性と位相回転が合致せず、制御の不安定問題を引き起こします。
 さらに位相補償を複雑にしているのはハイ・ブーストの特性はδの変化に対してのみ表れ、入力変動や負荷変動に対しては別の特性を示すことです。結局三者三様の周波数特性になるので位相補償の検討に時間が取られてしまいます。やはりSPICEなどの回路シミュレーターを適切に使うことが必要になります。

表1:各フィルターの特性比較[クリックで拡大]

*伝達関数の分母の項にS項が現れるポールの周波数特性は高域で利得が下がるにつれて位相が遅れます。一方、伝達関数の分子の項にS項が現れるゼロの特性は高域で利得が上がります。

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