位相とは周期信号の任意の時点を基準点とし、取り上げる対象時点と先の基準点との間の時間的ズレを表現する用語で、一般には基準点には0Vと交差するタイミングを選びます。位相はこの基準点に対するものなので相対的な値であり、交流信号に対してのみ使います。
具体的には信号1周期を360度(=2π〔rad〕)とし、対象時点の時間的ズレがこの360度のどの位置に相当するかを意味しています。例えば90度遅れといえば1/4周期(=90/360)遅れていることを意味します。
2つの同一周波数の交流信号に対して使う場合もありますがこの場合は1つの信号を基準として他方の信号の時間的ズレを表します。この場合の用語は位相差を使用します。
べクトルには大きさと向きを表す2つの成分を持たせることができます。そのため先に述べた基準時点を0度に割り当てた時、対象とする時点の大きさを半径方向rとし時間的なズレを360度に対する向き*φとして対象信号を表現できます(図3)。
一般には反時計方向の回転を+として進み位相とし、時計方向の回転をーとして遅れ位相としています。この向きによって遅れ位相か進み位相かを区別します。
一方、ベクトルを角度と大きさではなく、実軸の成分[r×cos(φ)]と虚軸の成分[r×cos(φ)]の合成として表すこともあります。この場合、角度φは図3を参考にすれば、
です。
この定義から位相は反時計方向が+(正)になります。
*大きさと角度で表すことを軸(極)座標表現、あるいはr−φ表現と言います。一方、実軸とそれに直交する虚軸による表現を直交座標表現、あるいはX−Y表現と言います。
図3は反時計方向を正とした位相の概念図ですが、遅れ位相(−φ)であれ、進み位相(+φ)であれ角度の絶対値が同一であれば実軸成分は同じ大きさになります。この時、両者虚軸の成分によって区別されます。
ですが図3から分かるように位相φ=−180度の時、虚軸成分が0になるので+180度なのかー180度なのかは図形が同一のため区別がつきません。この考えを拡張すると任意の位相φは進み位相なのか、あるいは(360−φ)度の遅れ位相なのかは区別できないことになります。位相とはそのようなものですから位相を論議する時は常に基準波形(基準点)を意識しなければなりません。
今回は昇圧型DC/DCコンバーターの状態平均化法とシミュレーション波形解析の結果を比較しました。その結果、動作波形の解析でもハイブーストの特性が確認できましたが、周波数特性に原因は不明の若干の差を生じました。
この(1−s)特性は電流連続型のON/OFFコンバーター特有の問題であり、RCCや電流不連続型のON/OFFコンバーターでは発生しません。またステップダウンコンバーターでも発生しません。この点から制御を安定させるために電流不連続型で使用していることもあります。
今回で基本的な3種のコンバーターの説明は終わりとし、次回からは取り上げられる機会の少ない、でも有益・固有の特徴を持っている2つのコンバーターについて説明します。
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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