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プロセスエンジニアが「何でも屋」と呼ばれる理由――工場設備の視点で解き明かすプロセスエンジニアの現場から(3) 半導体プロセスエンジニアの仕事内容(2)(2/2 ページ)

» 2026年09月03日 13時30分 公開
[鳥海五歩EDN Japan]
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プロセスエンジニアが「何でも屋」と呼ばれる理由

 第1回では、担当業務の広さや調整力の必要性から「何でも屋」と呼ばれる理由を紹介しました。この章では、インフラ・ユーティリティーという視点から、その理由をさらに深掘りします。

工程トラブルの原因は周辺インフラに及ぶことも

 工程で異常が発生したとき、プロセスエンジニアは装置内部だけでなく、その周辺にあるインフラまで確認範囲を広げます。原因が装置そのものにあるとは限らないためです。

 装置が正常に動いていても、供給される超純水やガス、あるいはクリーンルームの環境条件に変化があれば、工程異常として表れる場合があります。

 担当する工程の枠内だけで原因を探していては、根本的な解決にたどり着けません。装置とインフラの両方に、視野を広げて向き合う姿勢が欠かせません。

単独では原因究明が難しい

 プロセスエンジニアは、工程トラブルの原因究明を単独で完結させられません。超純水や特殊ガス、空調、排水処理といったユーティリティーは、それぞれが専門性の高い技術領域だからです。

 原因がユーティリティー側にあると疑われる場合は、設備担当やファシリティ管理部門をはじめとする専門家と連携しながら原因を突き止めていきます。

 「何でも屋」と呼ばれる背景にあるのは、全ての業務を一人でこなす姿ではありません。工程全体を俯瞰し、必要な専門家を的確に巻き込んでいく役割を持つということにあります。

 工程の異常は、装置の外側に原因が隠れているケースもあります。次の章では、インフラ側の異常が具体的にどのような工程トラブルとして現れるのかを見ていきます。

インフラ異常が工程トラブルとして現れる仕組み

 インフラ・ユーティリティーの変化は、必ずしも設備異常として分かりやすく現れるとは限りません。本章では、プロセスエンジニアが工程結果や複数装置のデータから、どのように原因を切り分けていくのか、「原因を見極める視点」を紹介します。

装置条件が同じでも、工程結果が変わる場合がある

 装置の設定値や装置ログに大きな変化がなくても、工程結果だけが変化する場合があります。工程結果が装置条件だけでなく、供給される超純水やガスの状態、クリーンルームの温湿度・清浄度といった周辺環境にも影響を受けるためです。

 装置に供給されるユーティリティーや周辺環境が変化すれば、装置側の設定が同じでもプロセス結果は変化しうるのです。

 そのため、工程トラブルを調べる際は装置やプロセス条件の確認にとどまらず、確認範囲を装置以外にも広げる必要があります。

 プロセスエンジニアは、「装置に異常がないから問題はない」と判断するのではなく、工程を取り巻く環境まで含めて原因を探ります。視野を装置の外へ広げると、原因究明の糸口が見つかるケースもあります。

複数装置や複数工程の変化から、共通する原因を探す

 インフラ側の異常を疑う手掛かりの一つが、異常の広がり方です。

 異常がどのように広がっているかによって、まず疑うべき原因は変わります。代表的な2つのパターンをまとめると、以下の通りです。

異常の現れ方 原因を切り分ける方向性
同じ種類の装置が複数台ある中で1台だけ工程結果が変化 個別装置やその装置固有の条件を中心に確認
複数の装置で同じタイミングに似た変化が発生 ガス・超純水・空調など、装置に共通するインフラ側を中心に確認

 特定のエリアに異常が集中しているのであれば、クリーンルーム環境や供給系統との関係も確認する必要があります。

 重要なのは、目の前の装置だけを見るのではなく、「どこまで同じ現象が広がっているのか」を確認することです。異常の広がり方を見極めれば、装置固有の問題なのか、より広い範囲に共通する問題なのかを切り分けやすくなります。

工程データと環境データを組み合わせて原因を絞り込む

 原因を切り分ける際は、工程データだけでなく、周辺環境のデータも手掛かりになります。

 例えば工程結果が変化した時間帯と、湿度や供給系統が変化した時間帯が重なっていれば、両者には何らかの関係があると考えられます。ただし、データの変化が同じタイミングで起きたからといって、それだけで原因と断定することはできません。

 そのためプロセスエンジニアは、工程データ、装置データ、環境データなど複数の情報を組み合わせながら仮説を立てます。そのうえで設備担当やファシリティ管理部門と情報を共有し、実際の設備状態と照らし合わせながら原因を絞り込んでいきます。

 供給品そのものの品質が疑われる場合は、関係部門と連携し、薬液・ガスのサプライヤーへ確認するケースもあります。半導体工場では、装置・プロセス・インフラが互いに独立して動いているわけではありません。複数のデータを横断して確認する視点があってこそ、見えにくい異常に気付けます。

GlobalFoundriesのドレスデン拠点のクリーンルーム[クリックで拡大] 出所:GlobalFoundries クリーンルーム内部のイメージ。写真は、GlobalFoundriesのドレスデン拠点のクリーンルーム[クリックで拡大] 出所:GlobalFoundries

「工程の外まで見る視点」が必要に

 プロセスエンジニアが向き合う工程は、製造装置だけで成り立っているわけではありません。超純水や薬液、特殊ガス、クリーンルームの空調など、多くのインフラ・ユーティリティーに支えられています。

 工程で異常が発生したときも、原因が装置内部にあるとは限りません。装置条件に変化がなくても、供給系統やクリーンルーム環境の変化が工程結果に影響する場合があります。だからこそ、複数装置の傾向や工程データ、環境データまで確認範囲を広げていく必要があります。

 「何でも屋」と呼ばれるのは、全ての設備を自分で管理するからではありません。担当工程を起点に原因の範囲を広げ、必要に応じて設備担当やファシリティ管理部門などの専門家につなぐ役割を担うからです。

 工程だけを見るのではなく、その工程を支えるインフラまで視野に入れる。こうした視点が、複雑なトラブルの原因を見極めるうえで重要になるのです。

⇒「プロセスエンジニアの現場から」連載バックナンバー一覧

著者プロフィール

鳥海五歩(とりうみ・ごほ)

千葉県生まれ。木更津工業高等専門学校電子制御工学科卒業。国内半導体メーカーにて立ち上げ・導入支援業務を経験後、国内大手半導体メーカーにて17年間、量産工場のフォトリソグラフィ工程に従事。生産技術、歩留まり改善、量産立ち上げなどを担当し、半導体業界で20年以上の経験を有する。


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