チューナ機能をチップに集積する際に重要となるのがDSPである。DSPは、複数のフィルタおよび復調の処理を、リアルタイムで実行できなければならない。図4に、アナログ復調とRF 、IF、ベースバンドフィルタ処理などを行うDSP機能を内蔵したチューナのブロック図を示す。
チューナチップ上のDSPに書かれたアルゴリズムは、フロントエンドのテレビ信号処理を最適化するためのもの。速度やダイナミックレンジ、フィルタリング、復調機能に対する最適化技術が、すべて最終的なファームウエア設計に組み込まれている。ファームウエアにより、DSPはダイナミックに信号をサンプリングし、フィルタと復調器、AGC(自動ゲイン制御)回路からの信号をチューナ部へ戻すように再構成し、システム性能をさらに上げることができる。フィルタやゲインパラメータをダイナミックに変えることで、チューナは最適な性能を得ることが可能である。
デジタルテレビ受信機では、チューナ出力を直接デジタルフロントエンドに接続する。アナログシステムの場合、チューナチップはフィルタリングされたIF信号か、または完全に復調された音声と映像のいずれかを出力する。
テレビ信号をさらに制御し最適化するために、DSPはチューナのゲイン回路に対しAGCを行う。リアルタイムにフィードバック制御を行うことで、DSPはチューナから出力される信号の振幅をダイナミックに制御し、SNRとダイナミックレンジを劇的に向上させる。AGCは4カ所あるゲイン段のうちのどこにでも挿入できることから、信号をさらに増幅可能である。
ファームウエアの校正機能を使い、シリコンチューナを定期的に校正することにより、CANチューナと比べてユニットごとの性能ばらつきを改善できる。
図5はランダムに選択したシリコンチューナとCANチューナそれぞれ2台の応答と周波数の関係を比較したものである。DSPにより、周波数の変化に対する応答の平坦性が改善されているだけでなく、ユニット間で性能がほぼ同じであることが分かる。
加えて、ファームウエアによりシステムを再構成できる。I2Cリンクを介して関連するパラメータをチューナにダウンロードすれば、世界中のテレビ規格に対応可能なチューナを実現することが可能だ。シリコンチューナは、どのようなテレビ放送規格にも対応でき、“多言語対応”であるといえる。
プログラム可能なDSPを内蔵したシリコンチューナに、NTSC、PAL、SECAM向けの異なるファームウエアを実装すれば、それぞれのアナログ放送規格に対応したチューナとなる。デジタル放送規格のATSC、DVB-T、ISDB-Tにもプログラミングにより対応可能で、デジタル復調器を外付けすれば済む。
連絡先:alvin.wong@xceive.com
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.