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ワイヤレスセンサーによるネットワーク構築の勘所(1/3 ページ)

ワイヤレスセンサーネットワークは、ホームオートメーションから大規模な環境モニタリングシステムまでさまざまな用途に利用されている。本稿では、そうしたネットワークの構成要素であるハードウエア/ソフトウエアの設計上のポイントを示す。

» 2007年04月01日 00時00分 公開
[PJ Tanzillo(米National Instruments社),EDN]

 優れたワイヤレスセンサーネットワークを構成するには、2つの要素が必要となる。その2つの要素とは、低コスト/低消費電力で拡張性の高いハードウエアと、管理が容易なソフトウエアである。

 ハードウエアに関しては、よりコスト効率の良いマイクロプロセッサやチップセットが開発され、低消費電力での通信が実現されている例がある。例えば、ZigBeeプロトコルを利用したネットワークでは、使用機器のデューティサイクル(アクティブな状態にある期間)は1%未満、電池寿命は通常の単3電池で2年間にも及ぶ。

 ワイヤレスセンサーネットワークでは、電池の寿命がネットワークの寿命を左右し、しかも広範囲での通信が必要になる。従って、消費電力を最小限に抑えなければならない。そのような環境で使用する機器は、ほとんどの時間、消費電力の少ないスリープモードで稼働させることが必要になる。ハードウエアには、こうした要件を満たすことが求められる。

 ソフトウエアについては、メッセージの経路選択、ノードの管理など、通信に関する課題にまだ最適な対応ができていないのが現状である。

 本稿では、ワイヤレスネットワークの構成手法や、ハードウエア/ソフトウエア設計における留意点などをまとめる。

アドホックなネットワーク

図1 アドホックなワイヤレスセンサーネットワーク 図1 アドホックなワイヤレスセンサーネットワーク 

 典型的なワイヤレスセンサーネットワークとして多くの人が思い浮かべるのは、多数の同一のインテリジェントなセンサーがアドホックなネットワークを介して互いに通信するというものであろう(図1)。この構成では、各ノードが定められた時間に近隣のノードへメッセージを送信し、そのメッセージが目的のノードに到達するまで、センサーからセンサーへと伝えられていく。電力の制約がある場合でも、このような短距離の通信は簡単に実現できるため、この構成は消費電力の最適化という点においては理想的だ。また、中央集約型の制御を必要としないので、自己完結型のシステムに適している。

 しかし、この構成には、ネットワークの堅牢性の面で本質的な欠点が存在する。各ノードは使い捨てにされるくらい低コストなものである場合が多いため、ある程度の確率でノードに故障が起きることを前提にしておく必要がある。このような構成では、あるノードがネットワーク内の一固まりに対するゲートウエイとしての役割を果たしている場合がある。そうした主要なノードが故障すると、それにつながる一固まりが通信不能となってしまう。

 このような故障を検出し、修復するのはそれほど困難なことではない。とはいえ、多くのシステムは、遠隔地でワイヤレスセンサーネットワークを利用するため、センサーの存在する場所まで行くだけでも大きな出費になり得る。

ヘテロジニアスなネットワーク

図2 ヘテロジニアスなワイヤレスセンサーネットワーク 図2 ヘテロジニアスなワイヤレスセンサーネットワーク 

 アドホックなネットワークの代わりに、マスタールーティングノードとして機能する基地局(ベースステーション)をネットワーク内に複数配置する構成が考えられる(図2)。この構成は、ヘテロジニアスなネットワークと呼ばれる。

 ヘテロジニアスなネットワークでは、基地局でより多くの電力を消費する。その一方で、よりメンテナンスが容易であるという特徴を備える。この構成では、ネットワークのその他の部分に影響を与えずに個々のセンサーを切り離すことができる。これは、最近の携帯電話ネットワークに利用されているものと同様のモデルだ。都市の真ん中で通話が途切れた経験を持つ人なら、ヘテロジニアスなネットワークが成功するか否かは、基地局の能力と配置にかかっていることが理解できるだろう。

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