センサーネットワークの複雑な問題をすべて考慮し、経路選択、通信および電力管理の方法を決定したら、続いてはネットワークのアプリケーションソフトウエアを完成させなければならない。アプリケーションソフトウエアは、ハブ上のもの、ノード上のもの、ユーザーインターフェースの3つに大別することができる。
まず、ハブ上のソフトウエアは、電池の寿命が最大となるように、ネットワークの通信レベルを管理する必要がある。
一方、ノード上のソフトウエアは、消費電力を管理し、データの伝送を最小限に抑えるように処理を行わなければならない。つまり、このソフトウエアは、ネットワークによって重要な情報のみが送信され、それ以外は除外するように機能する必要がある。
ノード上のソフトウエアは、ワイヤレスセンサーネットワークをクラスタベースの分散コンピューティングシステムとして扱う。このようなシステムを構築する際には、単一のアプリケーションを開発し、それをすべてのノードで並列に実行することになる。各ノードには固有の識別子を与え、その識別子を基にソフトウエアが処理アルゴリズムを適用する。この手法の利点は、プログラミング時にきちんと考察して単一のプログラムを各ノードに配備することにより、それぞれのノードに同一の柔軟性を効率的に与えられることである。
ユーザーインターフェースは、すべての情報を収集し、それをユーザーが直感的に理解できる形で表示できるように作成する。そのようなソフトウエアを開発する方法の1つに、ワイヤレスセンサーをオシロスコープやデジタルマルチメーターのような機器と同様に扱う方法がある。この方法であれば、開発者になじみが深くやりやすい方法でネットワークとやりとりすることにより、アプリケーション開発の複雑さを抽象化することができる。ワイヤレスセンサーネットワーク業界における主要なメーカーは、ソフトウエア開発環境に対するドライバインターフェースを提供することにより、この要求に対応している(別掲記事『ソフトウエア開発環境の一例』を参照)。
National Instruments(NI)社の「Lab VIEW」は、計測業界で長く利用されてきた開発環境である。これを用いることにより、計測/制御用のハードウエアと迅速かつ効率良くデータのやりとりを行い、システムを構築することができる。このLabVIEWは、ワイヤレスセンサーネットワークの構築にも利用できる(図A)。
米Crossbow Technology社、米Accutech社、米Accsense社などのワイヤレスセンサーベンダーは、NI社と提携し、それぞれのワイヤレスセンサーを用いたネットワークと接続してプログラミングを行うためのLabVIEW対応のドライバを開発している。そのドライバにより、LabVIEWユーザーは、最小限の学習期間でワイヤレスセンサーネットワークで用いるプログラムを開発することができる。
図Bは、LabVIEWが提供するユーザーインターフェースの例である。これは、2つのプログラムから成るブロック図を表している。下部のプログラムは、NI社のドライバソフトウエア「DAQmx」を用いて記述されたもので、有線のデータ取得デバイスからデータを取得する。一方、上部のプログラムは、Crossbow社のワイヤレスセンサーノードから温度を読み取るものである。2つのプログラムはまったく別のハードウエア技術に関連するものだが、どちらも類似の見た目で表示されるように、ユーザーインターフェースが設計されている。
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