メカニカルな部品を搭載した組み込みシステムの普及を後押しするために、さまざまなメーカーがPCI(peripheral component interconnect)、Compact-PCI、PC/104、VMEbusなどの規格に準拠したプラグイン方式の動き制御ボードを提供している。それらのボードにより、コントローラの設計、フィードバックループの最適化といったことを気にすることなく、パソコンや組み込みシステムに動き制御機能を付加することができる。
例えば台湾ADLINK Technology社のPCIバス向けステッパ/サーボ動作制御ボード「PCI-8174」は、タイムクリティカルな動作シーケンスの実装を簡略化するオンボードのDSP機能を提供する(図1)。同ボードは半導体製造装置、光検査装置、車両シミュレータ、高精度彫刻用機械などの分野で利用されている。4本の軸を用いた線形補間と任意の2本の軸を用いた円弧補間が行え、ファームウエアのカスタマイズも可能である。価格は1190米ドルからとなっている。
組み込み製品に動き制御を盛り込むに当たっては、開発キットを試してみるとよいだろう。例えば米TechnoSoft社の「MCK2812 DSP Motion Control Kit」は、DCモーターのハードウエア/ソフトウエアの両方をサポートする評価用プラットフォームとしてよく使用されている。米Texas Instruments社のDSP「TMS320LF2812」、128Kワードのプログラム用RAM、シリアル通信インターフェースがプリント配線板に実装されており、インバータ電源モジュール、ホールセンサー付きブラシレスモーター、500ラインの評価用エンコーダも含まれている。ホストとなるパソコンと評価ボードとの間のすべての通信は、ダウンロード、デバッグ、検査の機能を備えた通信モニターを介して行われる。また、同キットには、統合デバッガ、基本アセンブラ、リンカー、およびプロジェクト管理システム内でアセンブラアプリケーションを作成/編集/テストするための機能を備えたDMCD(digital motion control development)ソフトウエアプラットフォームが含まれている。価格は3290米ドルで、TechnoSoft社から直接入手することができる。
メカトロニクスの技術者は、設計のアイデアを詳細にモデル化してシミュレーションすることにより、早い段階で操作上の動きを決定し、システムの欠点を明確にする。ハードウエアが完成する前に正確なシステムモデルを作成し、システムが仕様を満たしていて、顧客の期待に応えられるものであるかどうかを判断するのである。
残念ながら、機械的な要素と電気的な要素が共存する場合、モデル化のプロセスは非常に複雑なものとなる。この問題に対する解決策の1つは、そうしたハイブリッドシステムに対応するようにモデル化言語を拡張することだ。IEEEはこの考え方にのっとり、VHDL(IEEE Standard 1076-1993)にAMS(analog mixed signal)拡張を加えた。これは一般にVHDL-AMSとして知られており、アナログ/ミックスドシグナルモデルの開発/シミュレーションを可能としている。
米Mentor Graphics社の開発ツール「SystemVision」は、組み込みメカトロニクスシステムでは典型的なハイブリッドハードウエア技術の動作を記述するための基盤としてVHDL-AMSを利用している*1)。こうしたシステムは、アナログ/デジタル部品と電気機械的な部品を組み合わせた構成となり、それぞれが大きく異なるモデル化技法を必要とする。SystemVisionを用いれば、設計者は異なる抽象レベルのコンポーネントを同一システムモデル内に含めることができる。また、システムの一部分に着目し、そのコンテキストをシステム設計の範囲で扱うことが可能になる。
設計が進行したら、ハードウエアモデルをシステムモデルに取り入れてシステム性能を正確に検証することになる。その際には、機械、磁気、油圧、熱の影響など、さまざまな要素を組み合わせたシステムモデルを表現するために、代数方程式や微分方程式を利用する。例えばカナダのInfolytica社は、自動車用交流発電機のVHDL-AMSモデルを生成する設計ツールを提供している。
※1…Egel, Tom, "SystemVision for Embedded Mechatronic Systems: Hardware Modeling," Mentor Graphics Corp.
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