コードレスの光学式マウスには、2個のAA(単3)アルカリ電池で動作するタイプのものがある。その種のマウスには電源のスイッチがなく、未使用時には低いデューティサイクルでその光源を駆動するようにし、自動的に消費電力を削減するようになっている。このような方式でも必要以上に電池が消耗し、マウスが動作しなくなることがある。この問題は、あらかじめ設定しておいただけの時間が経過すると自動的に電池の電源を切るスイッチ回路をマウスに付加することで解決できる。本稿で紹介するスイッチ回路であれば、マウスを分解するといったことを行うことなくこの回路を付加することが可能である。
本稿では、アナログとデジタル2つの方式の回路例を紹介する。いずれも、人が指で触れると起動するタイマー機能付きスイッチ回路によって、一定の時間がたったら電源を自動的にオフにするというものだ。マウスに限らず、電池で駆動する多くの機器において、電源を切り忘れた場合への対処策として利用することができる。
図1に示したのは、アナログ回路によって電源遮断用のスイッチを駆動する回路である。一方、図2は、デジタル回路によってスイッチを駆動する回路だ。いずれも、基本的な考え方は、電池の負極と電池ホルダーのスプリング部の間に30mil幅のラインパターンを持つ両面プリント配線板(図1、2のA)を挿入し、基板上のマウスの電源を閾(しきい)値電圧の低いMOSトランジスタ(図1のQ3、図2のQ1)でオン/オフするというものである。C1は0603サイズのX7R型セラミックチップコンデンサ、R1は0603サイズのチップ抵抗であり、これらやQ1〜Q3をプリント配線板の部品面に実装する。また、電池の正極と電池ホルダーのスプリングの間には真ちゅうの板を挟んで線材で接続する。指で触れる部分となる端子C、Dは、接着性銅テープを電池ホルダーの外側に取り付けて、線材で回路に接続する。
図1の回路で重要なのは、トランジスタQ1とQ2、C1で構成された部分である。Q3がオフのとき、C1は充電されておらずQ1とQ2はオフの状態にある。ここで、CとDをまたがるように指で触れると、指を通して電流が流れ、C1は充電されて、Q2のゲート電圧は電源電圧近くまで上昇してQ2がオンになる。その結果、Q1のベース電流が流れてQ1もオンとなり、このQ1のコレクタ電流によって抵抗R1のC1側の電圧も電源電圧近くまで上昇してC1が再び放電する。Q3はこのR1の電圧によってオンになる。ここで、CとDに触れていた指を離すと、Q2のゲート電圧はツェナーダイオードのリーク電流によって1.3Vまで徐々に低下する(C1は逆向きに充電される)。この電圧の低下によってQ2はオフになり、それによってQ1のベース電流が流れなくなるためQ1もオフになる。その結果、R1のC1側の電圧も低下してQ3が急速にオフする。Q3は、再びCとDの間に指が触れるまでオフのままである。
端子Eはオプションであり、Q3がオンのときにDとEをまたがるように触れるとQ3がオフになる。C1の値が0.01μFの場合、Q2のゲートからの数pAのリーク電流によってターンオフするまでの時間は約1時間となる。この部分の回路は、フラックス溶剤できれいにし、ワックスやエポキシ樹脂でコーティングしなければならない。
この図1の回路でも実用的に機能するが、スイッチのタイミングを調節したいなら図2の回路を利用すればよい。この回路の特徴は、小型のマイクロコントローラ(以下、マイコン)を使用していることである。この例では、マイコンIC1として米Microchip Technology社の「PIC10F200T」を利用した。このマイコンのソフトウエアは、このWebサイトからダウンロードできる。図2のAとB、C、Dの機能は図1のそれと同様である。また、スイッチQ1がオフのときマイコンはスリープモードになり、ほとんど電力を消費しない。
図2の回路において、CとDをまたぐように指で触れると、IC1の1番端子の電圧が高くなり、0.5秒後にブザーから短いビープ音が発生する。このブザーは0.5秒の間隔で、2回、3回、4回といった具合にビープ音を鳴らす。このビープ音を聞いた後、すぐにCとDに触れていた指を離してから、30秒間、30分間、4時間、8時間といった具合にスイッチQ1がオフするまでの時間を設定できる。この時間は用途に応じてプログラムを変更することで変えられる。
ジャンパスイッチJ1はオプションである。これがオープンのときはCとDに触れると回路動作がオフになり、J1をショートさせると、スイッチはプログラムに従って動作する。
この回路の場合も、図1の例と同じようにブザー以外のすべての部品をAの基板に実装する。ブザーは共振型の小さな圧電素子タイプのものを使用すれば、電池ホルダー内に簡単に取り付けることができる。
また、スイッチ回路を電池ホルダーの負極に取り付けられない場合には図3の回路を利用すればよい。この回路は図2の回路と基本的に同じようなものであるが、正極と直列に基板を挿入し、真ちゅうの板を電池の負極に接続する点が異なる。このとき、pチャンネルMOSトランジスタQ1(図2のQ1はnチャンネルMOSトランジスタ)を駆動するために、マイコンからの信号がローレベルとなるようにプログラムを修正する。修正内容はソースコード中に記述したコメントに従って、図3の回路に対応するようにすればよい。
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