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リチウムイオン電池パック、カスタム開発のコツ(2/2 ページ)

» 2008年12月01日 00時00分 公開
[Margery Conner,EDN]
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満たすべき規格

 再充電可能なノート型パソコン用電池パックの試験について定めた規格には、IEEE 1625がある*2)。IEEEは2006年の年末に、同規格の試験要項を改訂すると発表した。これはノート型パソコンの発火事故と電池パックのリコールが相次いだことを受けた対応措置である。改訂版の規格は策定中であり、発表は2009年の予定だ*3)

 このほかに携帯電話機の電池パックを対象とする試験規格IEEE 1725が存在する。また米Underwriters Laboratories社の規格UL 1642は、リチウムイオン電池の電気的試験と機械的試験、環境適応試験について定めている。

 電池ベンダーの米Boston-Power社でエンジニアリング担当バイスプレジデントを務めるRick Chamberlain氏によると、「特にノート型パソコン市場では、UL1642規格は最低限の試験だと考えられている」という。ほとんどのメーカーは、UL1642規格よりもはるかに厳しい試験を実施することで、安全性を保証する。

写真1 Boston-Power社の電池パック「Sonata」 写真1 Boston-Power社の電池パック「Sonata」 この電池パックは、UL規格の認証を取得済みである。UL規格ではリチウムイオン電池に対し、厳しい環境的条件と機械的条件、電気的条件の下での試験に合格することを求めている。

 電池パックの特性に違いを持たせることにより、製品の差異化を図ることができる。寿命の長い電池パックや充電時間の短い電池パックなどは、差異化の要因を備えていると言える。また、最終消費者に対しては、充電回数が多いことも訴求ポイントとなる。充電できる回数が多いということは、電池パックの寿命が長いということにもつながる。Chamberlain氏は、「電池セルの選択や電池パックの設計においては、システム設計者が電池セルのベンダーや電池パックの設計者などから話を聞くことが重要だ」と指摘する。同氏は「カスタム設計には少なくとも6カ月かかる」とするが、「実際のところは話し合いを経てからでなければわからない」(同氏)という。

 Boston-Power社が2007年に発表した「Sonata」は、既存のノート型パソコンに適用可能な電池パックである(写真1)。独自の安全機構として、セル内の化学反応の安定化を図ったほか、独自の電流制御回路、新型の温度ヒューズ、圧力制御通気弁などを備えている。Chamberlain氏は、この製品について以下のように語っている。

 「ノート型パソコン用の一般的な電池パックは6個のセルで構成されており、直列接続した3個のセルを2セット、並列に接続してある。個々の電池セルのインピーダンス特性にはわずかな違いがあるため、並列になった部分で流れる電流量にわずかな差が生じる。この差が電池セルの劣化や安全性の問題につながる恐れがある。それに対し、Sonataでは電池セルを大型化するとともに、3個の電池セルを直列接続する構成とした。この構成は簡単なものに思えるかもしれないが、電池パックの性能と安全性を大きく改善できる」。

安全機能の実現

図2 高度な電池パックの内部構造 図2 高度な電池パックの内部構造 残量計IC、アナログフロントエンドIC、過電圧保護IC、充電用MOSFET、放電用MOSFETなどで構成されている。安全にかかわる複数の条件(過電圧、過電流、過熱など)のうち1つでも逸脱した場合には、MOSFETをオフにするか、あるいはケミカルヒューズを切断する。

 リチウムイオン電池パックは、電池セルと電子回路を内蔵している。電池パックの電源管理回路が果たす役割を理解しておくことは、安全性と性能保証の両面から重要である。

 高度な電池パックは、電池の充電状態や温度、充放電電流、電圧閾(しきい)値などの情報をリアルタイムでホストに送信する機能を備える。そうした電池パックの電子回路は残量計ICや過充電保護回路、セルバランスの調整回路、過電圧保護ICなどで構成される(図2)。

 一般的に、電池パックの動作温度の上限は50℃程度である。それ以上温度が高くなると、残量計ICの安全回路が働き、電池パックの機能はシャットダウンする。これは、電池セルに直列接続されている2個のMOSFET(充電用MOSFETと放電用MOSFET)のどちらか一方がオフになることで実行される。温度が動作範囲内まで下がると、安全回路は再びMOSFETをオンに戻し、電池パック本来の機能が復旧する。

 携帯電話機やノート型パソコンなどを直射日光に当てたり、暑い自動車内に長時間放置したりしたときに、スイッチが入らなくなるという状況に陥ったことはないだろうか。これは上述した安全回路が働いた結果である。温度が下がると、携帯電話機やノート型パソコンなどは使える状態に戻る。ただし、温度が高い状態があまりにも長く続いたり、電流値が危険な範囲のままであったりした場合には、安全回路がケミカルヒューズを切断してその電池パックを永久に使えなくすることがある。ケミカルヒューズが切れた電池パックはそのままでは復旧不可能なので、リサイクルセンター行きとなってしまう。


脚注

※2…1625-2004, IEEE standard for rechargeable batteries for portable computing, IEEE, 2004, E-ISBN: 0-7381-4012-0, ISBN: 0-7381-4012-0

※3…"IEEE begins revision of laptop battery standard", http://standards.ieee.org/announcements/pr_P1625_guidelines.html


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