2009年1月28〜30日の3日間、自動車関連の技術を集めた総合展示会「国際カーエレクトロニクス技術展(カーエレ JAPAN)」が開催された。本稿では、カーエレ JAPANの専門技術セミナーでトヨタ自動車 稲津 雅弘氏が語った、同社のハイブリッド車用2次電池の開発動向についてお伝えする。
自動車を取り巻く環境は、これまでになく厳しい状況だ。大都市圏を中心とした排気ガスの削減や、石油代替エネルギーへの対応、そして大気汚染の防止など、環境改善に向けた規制が求められている。
そうした中、米国では2005年にZEV(Zero Emission Vehicle:無公害車)規制が導入され、各自動車メーカーでATPZEV(ハイブリッド車など)のカテゴリが新設された。欧州でも車体からのCO2排出量を120g/kmに引き下げるという動きが出ている。京都議定書を批准する日本では、2010年までに211万台のハイブリッド車普及を推進しており、神奈川県のように環境問題対策の1つとして電気自動車担当課を設置している地域もある。
1月28〜30日に開催されたカーエレクトロニクス展示会では、環境対策を意識した出展が数多く見られた。電気自動車専用の展示スペースが設けられ、技術専門セミナーでは、トヨタ、日産を始めとする業界のキーマン企業が、自社の開発動向を語った。
本稿では、満席の中講演されたトヨタ 第2技術開発本部 HV電池ユニット開発部長 稲津 雅弘氏による同社のハイブリッド車用2次電池の開発動向についてお伝えする。
トヨタでは、1997年に世界初の量産ハイブリッド「プリウス」を発売して以降、数多くの車両展開を進めている。同社のハイブリッド車は、いずれもトヨタハイブリッドシステム(THS)(注)を搭載しており、同社ではそれに回生ブレーキやモーターアシストの機能を加えたものを「マイルドハイブリッド」、マイルドハイブリッドにEV(電気自動車)走行を加えたものを「ストロングハイブリッド」と分類している。現在販売されているプリウスはストロングハイブリッドに分類される。
注:トヨタハイブリッドシステム(THS)とは
エンジンの出力を機械的な伝達経路と電気的な伝達経路に分け、2つの動力経路から、車輪を駆動する際に、エンジンの効率が常時最良となるように分配技術を制御して運転するシステムのこと
プリウスの燃費はモデルチェンジごとに向上しており、2003年に発売されたプリウスはガソリン車のカローラと比較すると、約2倍の燃費を実現している。稲津氏は「2000年に発売された2代目のプリウスは、昇圧コンバータを使用することで電池の電圧を202Vから500Vに昇圧した。その結果、モータの出力向上と損失低減を達成し、その後も搭載車両に合わせてモータ変則機構を採用するなど、改良を加えている」と語る。
トヨタでは、初代プリウスの電池に円筒形のニッケル水素電池を採用し、2000年に角型のニッケル水素電池に変更。出力密度を向上した。2003年には角型の金属電装で電池モジュール全体の小型化を図り、現在生産している車両については角型の樹脂電装製のものと、角型の金属電装製の2種類を採用している。そのほかマイルドハイブリッド向けには36Vの鉛電池を、アイドリングストップ用としては、リチウムイオン電池を採用している。
ここからは、プリウス(ハイブリッド)用電池、ハリアー(ハイブリッド)用電池、クラウン(マイルドハイブリッド)用電池、ヴィッツ(アイドリングストップ)用電池、それぞれの開発経緯と動向について触れる。
プリウス(ハイブリッド)用電池
プリウス用の電池は、小型軽量化のために、電池モジュールの出力を向上させ、搭載セル数を削減するという方針で開発を進めているという。
初代プリウスに搭載されていた角型ニッケル水素電池は、6セルを樹脂製電装で一体化し、モジュール化していた。セル間の接合を上部の端子で溶接し、一体化させているといった点が特徴であり、全体からリリーフバッグを1つ共通で設けているという構造だ。それに対し、現在のプリウス用電池モジュールは、セル間につなぐ溶接点数を増やし、さらに集電板の板圧を厚くすることで、内部抵抗を下げ、電流経路を最適化し、極板の電流分布をより均一化するという工夫を加えている。材料面では、正極材の添加剤を改良したことで、内部抵抗を30%低減した。
モジュールは、円筒から角型にしたことでパック内のスペース効率を向上させた。また、電池を高出力化したことで、電池パックとしての出力は変えずに、セル数を削減、パックの小型軽量化を実現した。03年度のプリウスは、00年度のプリウスに比べて容積で15%、重量で25%、小型軽量化している。
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